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『……オ別レシナクテ良インデスカ?』 |
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「ああ」 ひとりの男がいる。 西欧風の黒衣に身を包んだその男は、インガノック港に着陸するツェッペリン型飛行船のもたらす風圧の中で、微動だにせず、空を見上げていた。 「既に“石”は回収した。トートも破壊した」 『ハ、ハイ』 「ここでの仕事はすべて終わった」 男は、ひとつの巨大な城のようにも見えるインガノックの全景を眺めながら右手を挙げる。その手は、ほんの刹那、人間のものではない“何か”のように蠢いたが、すぐに革手袋に覆われた人間の手へと形態を戻した。 「黄金瞳か」 肩を竦めて、呟く。 「興味深いが。 『ハイ』 「宴の供とするには── そして、男は機関精霊に触れて何事かを呟くと、着陸した飛行船の噴き上げる排煙の中へと消えていった。
──同日。
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