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「おやおや。可愛いお嬢さん、僕のようなか細くひ弱な接続馬鹿(コネクト・フリーク)を訊ねて来るだなんて、随分とまた変わったご趣味をお持ちですね」
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「そうですか。……どこかでお会いしましたか?」 ──生きた心地がしなかった。体が震える。 見たこともない大柄な熊人間や、鋲を打った皮のジャケットに身を包んだ柄の悪い蜥蜴人間や、呼気仮面と耐毒マントで体を覆った人々で溢れかえる第5層の繁華街の奥で、肌も露わな女性たちに囲まれて水煙草をくゆらせるその男は、第5層全体の雰囲気も含めて、あたしがイメージしていた都市インガノックの様子からはあまりにかけ離れているように思えて。恐かった。 あたしは怯えていた。恐い。恐い。 新聞からは伝わってこない、都市の実態。生活の様子。こんなにも猥雑で混沌として、危険な香りに満ちているだなんて、あたしには想像もできない。 「あたしの情報を改竄しましたか」 「何のお話でしょう。どうです、あなたも一服されてはいかがですか。見たところ純然たる人間であるようですが、もしや都市外からいらしたお客人かな? よく耳にしますが、そういった人に出会うのは私は数度目ですよ。この都市では純粋な人間は数少ない」 脳変異した数式使いの連中なら別ですがね、と言って微笑む男は、気味の悪いくらいに整った顔立ちをしていた。そういう変異をしたのだと男は言って笑う。恐い。今にも、飛びかかって喉元を食いちぎられてしまうような、そんな恐怖が沸き上がってくる。わたしの知らない世界の住人だ。犯罪とか、そんなものを何とも思っていない人。 彼の名はDヘッド。 荒事の世界において悲劇の10年間を悠然と生き残ってきた、数少ない第1級指名手配済のイリーガル・ハッカーなのだとあたしは聞いた。蜥蜴の彼女はそこまで彼のことを調べてくれていた。お金があればそれぐらいのことはできるんです、コネがあれば、と彼女は平然と言っていたけれど。 ──恐い。 でも、でも、あたしは耐える。 「あたしは2級市民です」 「それで?」 「都市管理部の管理官があたしの後見人です。もしもあたしに手を出したらすぐにでも外で待っている共同管理兵があなたを逮捕します。速やかに、質問に、答えて」 「冗談を──」 「答えて!」 自分でも、驚くほどの声が出た。 女性のひとりが「猫みたい」と囁いて。 「……第7層28区域。A−3アパルトメント」 「何です、それは?」 「戸籍改竄の依頼を行ってきた人物の通話地点です。そこから彼もしくは彼女は無線電信通信機を用いて僕にコンタクトを図り、依頼を行った」 「誰が依頼したのですか」 「さあ」 「嘘は……」 「嘘かどうかはあなたが判断すると良いでしょう。あなたのその瞳の迫力にかけて、私は今の今だけは事実を話しましたから。あとはすべてあなたの自由」 ──嘘を言っているようには思えなかった。
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[sekien no inganock -what a beautiful people-] Liar-soft 21th by Hikaru Sakurai / Ryuko Oishi.
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