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あたしは、今日も空を見上げている。
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その直前のことをあたしは覚えていない。 あの日、あの時だけ。 あれから暫くの日々が過ぎて、あたしは、家の窓から空を見上げるのが日課の女になった。家、そう、家。勿論、あの日はお父さんとお母さんが待つはずの第2層17地区の小さな一戸建ての西享風建築の家へと帰ったのだけれど。 でも、不思議なことに。 結論から言うと、あたしの知るあたしの家族の暮らしていた小さな“あたしの家”は取り壊された挙げ句に10年の間に小企業の工場に変わっていて、それがまた崩落していたということらしい。 パニックになった。 涙は出なかった。 それからこの家……今のこの小綺麗なコンドミニアムの3階の部屋へあたしが落ち着くまでの間のあたしは、もう、荒波に揉まれる小船か葉っぱのようだった。 曰く、10年前に何かがあって人の姿が変わった。 最後のひとつはどうやら既に終わっていたとか、そんなことを言われてもあたしには何がなんだか、わからない。信じる訳がない。わかる訳がないもの。うん。ともかく、既にお父さんとお母さんは事故で──どんな事故かは教えてくれなかった──亡くなっていて、財産相続法と都市管理部の代替財産施行法が機能して、あたしには新しい家が用意されていて、あたしはそこで暮らしていたのだけど、ここ暫くの間行方不明になっていた、等々を、彼女はあたしに懇切丁寧に教えてくれた。 勿論、あたしは信じなかった。 そんなことを言われても現実味があまりにない。 次に、お医者さまに連れて行かれた。 けれども、あたしを出迎えたのは、見覚えのある髭をたくわえた初老のお医者さまではなく、山羊のような姿に変わってしまった誰かだった。あたしは不意をつかれて気絶しそうになった。でも、その山羊人の目と手は、あの髭のお医者さまと同じ、あたしが子供の頃と何ひとつ変わっておらず、あたしは、そのことに気付いて言葉を失った。 『私は正しくはもはや医師ではない。きみのような、まっとうな人間としての肉体を持つ者以外にはね。私は、薬剤師として生きるしかなかったのだが』 お医者さまはあたしの瞳を見て、話していた。 『10年の悲劇の後に再び現れたきみ。きみは、どうやら、この10年の記憶を失ってしまっているようだ』 記憶がない。 ──それがあたしの、アティ・クストスの。
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[sekien no inganock -what a beautiful people-] Liar-soft 21th by Hikaru Sakurai / Ryuko Oishi.
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