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イ ン ガ ノ ッ ク テ イ ル ズ ──それは、彼が未だ黄金の螺旋階段を昇る前のこと。 |
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やあ、諸君。 お初の方々であれば我が名は忘れるが宜しい。このランドルフなる名は銀の機関と無形の鍵によって既に呪われており、カダスと西享のどちらの《ふるきもの》たちにも忌み嫌われ特に西享に最後に残りし孤独の王にはいたく嫌われ呪われているのであるから、もしも貴方が西享人であるならば、やはり、忘れるが宜しい。 かつてのインガノック。 ──そう。 ならば今日はインガノックの話をしよう。 10年前に発生した《復活》によって41のクリッターとさまざまな幻想生物(モンスター)は、人々からおとぎ話と安寧とを奪い取った。理由はひどく単純。クリッターであっても幻想生物であっても、概ねの場合、誰かがどこかで夢見たものであったからだ。例えば本の中で、例えば空想の中で、例えばおとぎ話の中で、幼い頃に夢見たものにどこか似た怪物──概ねの場合、それらは人を襲う。特に初期発生した幻想生物の多くはクリッターと同じく人を害した。機関精霊のように無害なもののかたちなど当初はなかった。 だから人々は忘れた。捨てた。 そして人々はすべてのおとぎ話を失った。 ──残ったのは。 幻想生物の多くは、動植物の異形化したものであると言われていた。愛されたはずの犬は血の叫びのバーゲストに、荷と人とを運ぶ馬であれば焼き尽くす火の王の軍馬に、物陰に潜む蛇であれば現象数式を以て打ち砕くナーガに、朝を告げる鶏であれば毒をもたらすコッカトリスに、壁を走る蜥蜴であれば石へと変えるバジリスクに、物言わぬ樹木であれば吸い尽くすトレントに。 あらゆる生き物が狂い、姿と性質とを変じた。 さて、さて。 ならば今日は、異なるかたちを得た“人”の話をしよう。 彼が、背後に佇むものに気付く直前の話だ。 諸君が触れた彼らの物語。 ──さて。 ──私が導く、最後の、過去の話だ。
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