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『ココノ下ハインガノック最下層ナンデス。 「そうか」 『ハイ。クリッターハミンナ消エタッテ言ワレテマスケド、幻想生物ハ消エテナインデス。姿ヲ隠シタダケデス』 「いずれ消える。 『フルキモノ?』 「黙れ」 『(ヒドイ……)』 「走査を始めろ、機関精霊25007号。かつてこの都市に存在した2級認可企業ベアリング社とその関連する7社から流出した特殊神経系数秘機関の行き先について、廃棄された後の足取りもすべてだ。探れ。見つけ出せ」 『ベアリング社、デスカ? 機関精霊が驚いた声をあげているうちに、黒い男のひとは手をかざして何かをしているようです。それは現象数式のようにも見えたけれど、なんだろう、わからない。 『──走査中デス。走査中デス──』 「早くしろ」 『──発見シマシタ──』 「見せろ」 『──オ探シノ情報ハ保護サレテイマス── 「黙れ」 小さく言うと、男のひとがまた何かをしました。手をかざしているような、機関精霊に触れているような。はっきりとはわからないけど、彼がそうすると、25007号君は少しだけ震えて、遮光器(バイザー)部分を赤くちかちかと小さく光らせて、何かの機械としての作動をしているみたい。 『──コード・トートヲ確認イタシマシタ── 「よし」 男のひとは頷きます。 しばらくすると機関精霊25007号君はこてん、と倒れてしまったけれど、我に返ったみたいに飛び跳ねるように起き上がるときょろきょろとし始めて……。 不思議そうに首を傾げるの。 『アレ、アレ、レ。4分間ノ記録情報ガアリマセン。ナンデダロ。ナンデダロ。アナタ、モシカシテボクニ何カヲシタンデスカ? アナタ、モシカシテ“ハッカー”ナンデスカ?』 「違う」 『ハッカー……ジャナイ?』 「古いやり方だ。 『?』 「走査は済んだ。 『エ、イツノマニ、ッテ4分間ノアイダニデスカ。 「この悪路ではな」 男のひとは肩をすくめます。 これじゃあ蒸気自動車はちゃんと走れないわ。 「構わん。歩く」 『了解シマシタ! そうして、雨の中、ふたつの影は第12層の奥へと歩いていきました。廃棄された機関群の中を歩き続け、半ば壊れた数秘機関を埋め込んだドラッグ・ギャングくずれの怖い男のひとや、言葉を話すことさえなく叫び声をあげて襲い掛かってくる幻想生物を、まるで影の中をすり抜けるようにするするとかわして……。 やがて目的の場所へと辿り着くの。 でも、でも。 第12層第12区域B2街路。 ──何もかもを呑み込むの。 ──倉庫ごと。
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