上奥湖に沿った通りは観光道路でもあり、街灯もところどころに設置されてはいるが、それでも薄暗いことにかわりはない。
全裸の女がそんな道を跳ねるように歩いていたら、どちらかといえば欲情するより恐怖する人間の方が多いだろう。どう考えたって普通じゃないからだ。
そんなわけで、簸川五樹は暗闇の中をスキップする肌色の影を見たとき、なにより恐怖で歩みが止まってしまった。
「──どうしたの、兄さん?」
半歩遅れて歩いていた樹里が、訝しげな声をかける。
「……あ? え、なに……?」
「なによ、へんな声だして」
さっきからずっと生返事だったこともあって、樹里はむくれた。
「わたしのしゃべってたこと、ぜんぜん聞いてなかったんでしょ」
「う、あ……うん……」
「やっぱり!」
樹里はことさら怒ってみせたが、ここでようやく、兄の視線が一点で固まっていることに気がついた。
それにならって目をうつし、今度は樹里も絶句する。