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ひどく暗い場所だった。 そこは、建物の中だった。 閉じ込められてる。 あたしが? 「ここは、雷電の物語だよ」 あたしの足下で影が言った。 そんなのおかしいよってあたしは思う。 ここに雷はないよ。 「誰だ」 声。聞こえた。 聞いたことない、よね。うん。聞き覚えのない誰かの声。 「貴女は、誰だ」 ──あたしはリリィだよ。 「リリィ」 ──うん。リリィ・ザ・ストレンジャーって呼ぶひともいるけど。 あれ? あれれ? 声が出ない。ニャアって鳴き声にもなってないんだ。 なのに、暗がりの奥まった場所にいる誰かには聞こえているみたいで。 一歩。前に出て。 ──きみは、誰? 「私は……」 ──きみは? 「……私は名乗る価値もない者だ。 アルカトラズ? 涙を。 どうして? ──どうして、きみは涙を流しているの。 「私は守れなかったのだ。 ──守りたかったのに、守れなかった。 「そうだ。 ──あたしは、リリィ。 「貴女は私を断罪する者か。 ──あたし、そんなこと、しない。 「ならば、何のために」 ──ごめんね。わからない。 「……」 ──きみは、何をして欲しいの。 「断罪を。私は最早、生を啜る価値さえない。 ──そんなこと、言わないで。 「だが、私だ。 ──意味が欲しいの? 「……」 ──それじゃあ、あたしが意味をあげる。 「何?」 ──多くのひとを傷付けたなら、それと同じ数のひとを。 「同じ数……」 ──きみが、助けてあげて。 「何……」 ──だから、意味がないなんて、言わないで。
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「ああ……」 そうして── 男のひとは深く深く息を吐いた。 鎖の軋む音がした。 「黄金の貴女。輝きの貴女。 ──うん? 「人を佑(たす)けよと貴女が言うならば、 そう言って── 男のひとが顔を上げる。 きみの言葉は、とても、とても、力強いものだったのに。 まだ、瞳を流れ落ちるものがある。 とめどなく溢れる── 涙── ──なぜ、きみはまだ泣いているの。 「貴女にはわかるまい。 ──なぜ? 「貴女の母の遠き父祖を私は知っている。 ──救う? 誰を? 「だが」 涙を流したまま彼の瞳の輝きが燃え盛る。 うん。まるで、空に輝く雷みたいにあたしには思えて。 彼はあたしに向かって言った。 「私は貴女より祝福を賜った。
「たとえ、万象が立ち塞がろうとも」
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