イラスト:桜瑞
















●第2裸・全裸同盟

 「清香さん、朝ですよ。清香さん」
 控えめに、しかし容赦なく聞こえ続けるノックの音で、清香は覚醒した。
 時計を見る。午前十一時。朝ですよ──と起こしに来るには、少し遅い。
「ふぁい、もぅ起きたよぉ、リカルドくぅん……」
 布団の中から生返事をして、のろのろ起きあがる。ずり落ちた毛布や掛け布団は気にしない。清香さん、リカルドくん、のなれなれしい呼び方は、きのう清香が強要したものだ。
 ふらふらと歩き、客室の扉を開く。
「ん〜、おはよ……」
「──って、清香さん?」
 入り口に立っていたリカルドは、彼女の姿を見るなり、あわてて顔をそむけた。
 ハァ〜、とため息までつく。
「なんてカッコしてるんですか!?」
「んあ?」
 まだ半分ぐらい夢の中にいた清香は、リカルドの焦った声に、あらためて自分の姿を見下ろした。
 ぼさぼさの頭。化粧ひとつしてない顔。メガネは外したままだし、何より一糸まとわぬ全裸だ。
「ありゃ」
「『ありゃ』じゃありませんよ、もう……待ち合わせの時間を過ぎてもロビーに顔を出さないから、心配して来てみれば」
「いやははは、ごめん。あたし、寝るときは何にもつけない主義でさ」
 清香はあわてて部屋に戻ると、枕元に転がっていたメガネをかける。
「これでよし」
「ぜんぜん良くありません!」
 悲鳴のような、嘆きのような声が聞こえ、扉が静かに閉じられた。
「ロビーにいますから、じっくり、ゆっくり、ちゃんと準備してから出てきてくださいよ?」
「おっけおっけー、五分で行くから」
「急がないでいいですからね! きちんとするんですよ!?」
 念を押すような声が届き、リカルドの気配が遠ざかっていく。ようやく脳細胞が正常に働き始めた清香は、町の案内──特に簸川家への案内を彼に頼んでいたことを思い出した。
 待ち合わせ時間は九時。律儀にロビーで二時間も待ったらしい。
「真面目ねえ、リカルドくんたら」
 自分の不真面目さはまったく気にせず、清香は彼の困った顔を思い返して苦笑した。