「ライカひとつでどんな事件にも踏み込んでいく上海トリビューンの敏腕記者、アイリーン・ワトソンと!」
「八鏡大学第三新聞部部長である井之頭円による、キカテへのロングインタビュー」
「どんどんひゅーひゅーぱふぱふー!」
「お? お?」
「ちなみにここでの記事は、上海に戻ったらバッチリ記事にするつもり! ふふ、これで上海トリビューンのエドワード・マローンと呼ばれる日も近いってものよ!」
「……夢の中の話を幾ら記事にしても意味はないわ。……まぁ、上海トリビューンなら話は別かもしれないけれど」
「ちなみに上海トリビューンとは、アイリーンが務めている新聞社のことである! 規模としては、中の下程度。方向性は“東スポ”や“サン”誌に近い、大衆に好まれる新聞である!」
「それで、私は何を答えればいいんだい? 私が知っている話ならば、どんなことでも答えようと思うけれど。牛の育ってる様子かな? それとも野菜の成長具合とか……」
「学級新聞の話題ならばそういうのも良いかも知れないけれど、私としてはもっと事件性の高いものがいい」
「そう、事件よ事件! この世界でおきているビッグニュース! そういう話を求めているの、何よりも! 特にマスクドシャンハイ様絡みのもので私の知らないものがあれば――」
「(遮って)貴方から考えて、私達が来た後で起きた大きな出来事を教えてほしい」
「君達が来てからの大きな変化か……。うん、そうだね……ああ、皆が来てから、変わった所があるんだよ! これまではあまり踏み入られることもなかった場所に、人が入るようになったからね! そういう所の話を聴く機会も増えて、嬉しい限りさ!」
「ふむふむ、例えば!?」
「例えば海だね」
「海で、何が!?」
「海は、アルバトロス号がやってきてくれたお陰で、陸から遠く離れた所にどんなものがあるのかも分かったしね。いやぁ、あんな所に島があるなんてね」
「そうね。これまで小型の漁船程度しかなかったこの世界にとって、アルバトロス号のような蒸気機関船を使った冒険により発見された島などは大発見かもしれない。まあ、夢なんだけど」
「島……島があったとか、そりゃ未開地域にとっちゃ大ニュースだけど、その程度じゃなぁ……」
「じゃあ森の話はどうだい? これまでは狩人やキノコや山菜採りに行く人が入るくらいだったけれど、君達が来てからは美育学園の人や大輪女子の人が住むようになったり、新しい人々が集落を作ったりで、大分様子が変わったんだよ!」
「本来存在しなかった人々が住まうとしては、森は重要。私達の歴史でも、外からやってきた開拓者は既存の住人の生活圏と重ならないようにしていた。……まぁ、結構普通に村のお世話になってる人も多い気がするけど」
「そんな所に人が住むようになったって言われてもねぇ……。そんなんじゃ、耳の肥えた読者は面白がってくれないのよねぇ」
「ならば、テーブルマウンテンだ! これにはビックリしたね! まさか一夜であんなものがドーンと出来ているとは、夢にも思わないじゃないか!」
「いえ、夢よ」
「ああっ! あれには本当に驚いたわ! 何せドイルの小説ロストワールドにあった舞台、そのままなんだもの!」
「そうだろうそうだろう、皆、驚いたと私に言って聴かせてくれたよ!」
「木々が生い茂る原初の森を分けいって抜けたその先に、突如として出現するのは高く迫り上がる巨大な壁! ああっ、あれこそが探検家ならば誰でも憧れるロストワールドの舞台、紛うことなくテーブルマウンテン!」
「ノブも大喜びしてた……いや、してたっけ?」
「あれ、ノブってずっと弘が探しているんじゃなかったっけ?」
「ノブー! どこだよノブー?」
「ああ、そうだった。ここに来てから弘とノブはずっと離れ離れだったのよね」
「詳しい話は省くが、そういうことになっている! 彼らのロミオとジュリエットよりも悲しい恋物語の結末がどのようなものかは、本編をご期待いただきたい!」
「夢だから。ナレーションが言ってることも全部夢だから、信じない方がいい」
「そんなテーブルマウンテンを登った先にあるのが、これまた皆が度肝を抜かれた、私もあまりに驚きすぎて腰を抜かすかと思った、それは――古代遺跡!」
「その様子は、私達が実況レポートをしているわ!」
「VTR、Q」
              ◆           ◆           ◆
「はぁい、アイリーンです。八鏡大学探検部に随伴している報道部の人々のカメラにお邪魔していまっす♪ でもすごいわね、こんな気軽に映像が撮影できるようになってるなんて――って、それよりも、今日はこっち。遺跡の探検の様子をリポートしま〜す! さあ、早速、遺跡に踏み入ったばかりの左文字探偵事務所所長と、八鏡大学探検部副部長の様子を見てみましょう!」
「な、なんだ、ここはー?(棒)」
「こ、こんなところがあったなんて、びっくりですー!(棒)」
「うわぁー、まるでうちの大学の図書館みたいだー(棒)」
「……カット! カーット! もうちょっと真に迫った演技できないかなぁ? 自然さが足りないよ、自然さが!」
「し、自然って言われても……」
「もう何度も来てるんだぞ! 今さらそんな風に驚けるか!?」
「僕もそろそろ慣れちゃったかなぁ」
「え、俊兄はそうですか? 私なんて何度来ても驚いてしまいますけど」
「うん! 驚く驚く! ンマイものないけど、ほら、こっちのドア開くと――」
「――なっ、くっ、ここはどこだ!? 全く別の場所に迷いこんだ気分だ……ちくしょう、知らずの内にコカインでも嗅がされていたのか!? Dammit! こんな罠にかかるとは、リビア以来だ!」
「幻覚だとしたら、悪仙の仕業かもな。奴らの宝貝ならそれくらいすると思うぜ」
「その可能性もあるけど、多分そうじゃない」
「この辺りにある本は、どこの言語で書かれた分からない本ばかり。世界のある程度の言語ならば読解できるよう勉強したつもりなのだけど、全然読めないわ」
「恐らくここは、私たちが元いた世界の形だけ模した、まるで別の場所なんでしょうね」
「びゅいびゅい!」
「って言われてもね。なんかそういう感覚に慣れちゃったせいで……。って、コネがスリープモード入ってついてきてないよ! ちょっと連れてくるね(たったった……)」
「あっ、待ちなさいよ! 私も――って、何で止めるの?」
「お前はポルノ監督にでもなりたいのか?」
「え、私は事件記者よ? なんでポルノなんて言葉が出てくるの?」
「なら、こっちのがずっといいぞ! ジケンのニオイ、プンプンだ!」
「と、コヤネ隊員が言ったその時である!」

「ふはははは、川野口探検隊の諸君! この遺跡の秘密はこの俺が先に頂く! とぅあっ!」

「どこからともなく現れた藤村山准教授が、インディも顔負けの鞭さばきでアクロバティックに遺跡の奥へと向かっていくではないか!」

「やれるもんならやってみなさい! あたしの方が先に手に入れてみせるんだから!」

「藤村山が先に行けば、ノブ隊長が続くのも当たり前! さあ、デッドヒートの始まりだ!」
「いけない、それ以上先に行っては――!」
「あ、ノブだ。行っちゃったけど」
「……ふぅ、ようやく戻ってこれた。いやぁ、コネは村のロッカーに置いてきてたの忘れて、外まで戻っちゃってたよ。失敗失敗……ってあれ? ねえ、どうしたの皆して」
「コネじゃねーぞ」
「あれ?」
「アヤはアヤだぞ」
「あっ……! ……仕方ないだろ! コヤネと混ざるんだよ! ていうかネが多すぎるんだよ! アドルフィーネに、コヤネに、アヤカシコネに、僕はもうどうすればいいんだよ!?」
「逆ギレしてるとこ悪いんだけどさー。今、そこにノブがいたんだけど」
「え、えええええええ!? じゃあ、追わないと!」
「フフフ、ならばそこの未熟な果実達を置いていってもらおうか!」
「ならばとか意味分からんが、貴様は独孤求幼! 相変わらず幼児狙いの変質者的行為を繰り返しているというのか!」
「黙れ! 黙れ黙れっ! 人の価値観というものは十人十色! 貴様にとっての悪が、本当に世界にとっての悪かは分からないだろう! お前のような極端な思想家が悪書追放運動などを行うのだ!」
  「「「「「お前はリアル犯罪者だろうが!」」」」」
「俊作! 時間ないから、ほらっ、早く早く! マスクドシャンハイ様に変身して!」
「おう、任せろ!」
「ノブを追うためにも僕も――……あああっ、そうだった、アヤがいないから変身できない……」
「ふん、こんなヤツは俺一人で十分さ! とうっ、変――」
              ◆           ◆           ◆
「――と、ここでテープは切れてしまったのだった!」
「あああっ、なんてこと! せっかくのマスクドシャンハイ様の勇姿があぁぁ……」
「まあ、そもそも夢だから。どれだけカメラ回しても後に残せない」
「あははははは! 君達の話はいつ聞いてもダイナミックで面白いなぁ」
「え、そう? なら、また突撃レポートしてきた話をしてあげるわ」
「私も探検の結果を報告しよう。夢だけど」
「うん、よろしく頼むよ!」
「このようにして、キカテは探検部や新聞記者を始めとする市民記者から話を聞いて、ネット新聞のように情報を集めているのだった……!」
   
「………………」
(変化の影響が大きすぎる。本当にこのまま彼らを自由にして、平気なの……?)
(いいえ、今は彼女が幸せにしている。ならば、私は、まだ……)


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