──たゆたう“水”が“かたち”となって。
──自分を閉じ込めていた“塔”の暗がりから出されて。 ──もうひとりの、鋼で出来た黒い少女も一緒に。 ──走って、走って。 ──そこに。 「飛空艇を用意した。行け」 「はい」 「ち、ちょっと待って。待ちなさいよ。ジェイム、ズ……はあ、ふ、は、はぁ……あたし、たち、ずっと走って……まだ、息が苦しく、て……追跡者もいないのだから、少し、休ませて……けほ、けほ、そ、それに、あたしは、まだ……」 「時間はない。行け。セバス」 「はい。了解しました」 「ま、待って……ちょっと、だけ……」 「ワン」 「何だそれは」 「何って、あなた、見てわからないの、いぬ……」 「黒い」 「黒い、けど……ぜ、はぁ……」 「西部イングランドで見た犬の体格は、この4倍はあった筈だが」 「ワン」 「あるじ。これは犬です」 「到底イヌには見えん。まあいい。メアリ・クラリッサ。お前のことは、折りをみてロンドンへ送り返す。それまではセバスと同行しろ。セバス。此よりはこれを守れ」 「はい。了解しました」 「ワン」 「お前には言っていない」 「仔犬くん、を、にらまない、で、よ……ぜは、ふ、は……おびえ、ちゃう……」 「ワン」 「……」 「あるじ。自動飛行中の飛空艇、現在地を確認できました。移動開始します」 「行け」 「はい。了解しました」 「ち、ちょっと、待っ──」 「ワン!」 ──“それ”は、少女に寄り添って。
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