2015/04/23
「店舗特典ドラマCD(ソフマップ様/グッドウィル様)」に「レーベル画像」を掲載しました( 詳細
2015/04/22
「DOWNLOAD」を新設、「ツイッターアイコン」と「バナー画像」を掲載しました( 詳細
2015/04/22
「WORLD&STORY」に「INTRODUCTION」と「マップ画像」を掲載しました( 詳細
2015/04/22
「SPEC」に製品の詳細を掲載しました( 詳細
2015/04/22
「店舗特典情報」の各店舗名から公式サイトへのリンクを設定しました( 詳細
2015/04/22
「色紙交換イベント」「クリアファイル配布会」の店頭POPを掲載しました( 詳細
2015/04/17
「特典情報」を更新しました( 詳細
2015/04/17
「色紙交換イベント」の開催地情報を追加しました( 詳細
2015/04/10
「色紙交換イベント」のサンプル画像を公開しました( 詳細
2015/04/10
特典情報のコーナー「SPECIAL」を追加しました
2015/04/03
「EVENTVISUAL」を追加しました
 舞台は、「お伽話症候群(フェアリーテイル・シンドローム)」の治療に特化した隔離病棟。通称「楽園」。

 「フェアリーテイル・シンドローム」とは自らを童話の登場人物だと思い込む人格障害の一種であり、入院患者たちは一様に「聖書」である童話絵本を抱え、その教えに従って生活している。

 主人公はそんな童話少女たちの楽園に、不意に紛れ込んでしまった記憶喪失の少年。何故この場所にいるのか、自分はどんな人物で何を成すべきだったのか、大事なことほどわからない。かりそめの役割を得ている少女たちがうらやましく思えるほどに、寄る辺ない。

 そんな折、彼の部屋で発見したスケッチブックには、乱れた筆跡でこんなことが書かれていた。

──少女たちの中にひとり、つみびとがいる。


マップ:Lem
  あなたは白い部屋で目覚めました。
  ここはどこでしょう。自分は誰なのでしょう。
  何一つわかりません。どうやら、頭の中も白く塗りつぶされているようです。

  風変わりな建物の中を彷徨うあなたは、色とりどりの少女たちに出会いました。
  目まぐるしいアリス。
  引っ込み思案なグレーテル。
  清らかなオデットと謎めいたオディール。
  大人びたラプンツェル。
  そして勇気あるゲルダ。

「彼女たちは『御伽話症候群(フェアリーテイル・シンドローム)』という、頭と心の病気にかかっているんだよ。自分のことをおとぎ話の登場人物だと信じ込んでいるのさ」

「ご覧、手に手に本を持っているだろう? あれは彼女たちの全てを記した、それぞれの物語。あの擦り切れた絵本のことをみんな『聖書』と呼んで、なにより大切にしているんだ」

「ここ? ここは、病院だよ。みんなここを『楽園』って呼ぶけどね、そんなわけがあるものか。いつかは誰もが出ていかなくちゃならないんだ。当たり前の、一人前の、大人のレディとして」

  お医者様はそうおっしゃいます。

  けれど、あなたの目にはどう見えますか?
  兎を追いかけるアリスを、ぼろを着て震えるグレーテルを、窓から髪を垂らすラプンツェルを、夜の湖に降り立つオデットと忍び寄るオディールを、カイを捜し求めるゲルダを──あなたは、どう思うのでしょう。
  痛ましいと目を背けますか。
  愚かしいと笑い飛ばしますか。
  それとも──

  ──そもそも、あなたの頭が白く塗りつぶされたのは、何のためでしょうね?

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 この物語の主人公。

 「フェアリーテイル・シンドローム」の患者として運び込まれてきたらしいが、一切の記憶を失っており、溺れていた役割どころか、自分の名前すらわからない。

「楽園」の少女たちと親交を深めるうちに、様々な謎、悲劇、冒険といったものに巻き込まれることになる。

 好奇心旺盛で無邪気、感性で動く少女の中の少女。ちょっとだけわがままで、かなり気まぐれで、でも与えられた愛の分だけ優しく涙もろい。「一人前のレディ」的振る舞いを意識して背伸びをするが、いかんせん幼すぎてレディの定義がずれている。

 無知、無垢、無邪気な幼い感性から繰り出される捉えどころのない会話は、苛々させられる一方で時折核心を突かれる印象。

CV:萌花ちょこ
サンプルボイス

 臆病で引っ込み思案で泣き虫、瞳と表情と悲鳴で気持ちを伝えようとする、小動物のような女の子。ひとりでは物語を進めることができないので、兄の「ヘンゼル」を探している。

 細っこい体のわりに食い意地が張っていて大食らい。見くびられがちだが、追いつめられると大胆な行動に出る。

CV:草柳順子
サンプルボイス

 無垢で清らかで愚かなオデットと、賢いけれどささくれ立った心を持つオディール。相似の美貌を持つふたり。頭の回転が速く要領のいいオディールが、おっとりとしていて頭の弱いオデットを馬鹿にし、嘲り、虐げている、そんな関係性。

 白鳥に変わる呪いをかけられてしまったオデットは、呪いの力の薄まる夜にのみ、湖の畔に降り立つ。

CV:かわしまりの
サンプルボイス
【オデット】
【オディール】

 大人びた少女。慎ましい柔らかな物腰、知的で優雅な挙措。

 その横顔は穏やかだがあまりに静謐で、どこか諦念的、退廃的、自棄的。まなざしは透明で虚ろ。無理矢理開花させられた蕾のようなエロスがある。

 自分の病室から出ることはなく、訪れた人間を養い親である「ゴーテルおばあさま」として認識する。その長い髪を、常に窓から垂らしているが──

CV:水純なな歩
サンプルボイス

 勇気あるしっかり者。口調や行動は浮ついておらず、比較的正気に近いように見える。

 この「楽園」や医療スタッフへの猜疑心が強いが、時折自らについて「ゲルダではない」と発言する辺り、「フェアリーテイル・シンドローム」は快方に向かっているのかもしれない。

 顔も忘れてしまった「カイ」を探すという強い思いに囚われている。

CV:赤司弓妃
サンプルボイス

 風変わりな「楽園」の職員。患者たちの妄想に合わせて様々な役割を演じてみせる。

 例えば、アリスにとっての彼は、時にチェシャ猫で、帽子屋で、ヤマネで、三月うさぎ。

 「楽園」内において時折目撃される黒衣の少女。

 神出鬼没の幻のような存在で、名前や立場、目的など一切が不明。

CV:桜城ちか
サンプルボイス
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「巨大化アリス」
「助けて!
  あたしの身体、大きくなってしまったの!」
アリスは──
真ん中からふたつに割れたドールハウスに手足をとられて、
ハマりこんで、にっちもさっちもいかなくなっているようだった。
派手にひっくり返ったスカートと、
そこから伸びているお尻や足は、
だらしない花と萎れた蘂のようだ。
「一体、何をどうしたらこうなるの……」
「あ、あたし……この家にお使いにきたの。
  ウサギさんに頼まれて。
  どうやら、あたしのことをメイドと間違えたみたいなの。
  ああ、どうしてあたし、引き受けてしまったのかしら。
  メアリ・アンなんて名前じゃないのに、
『勘違いしてくれて助かった』なんて……。
『これで堂々とこのおうちに出入りできる』なんて
  どうして考えちゃったのかしら。
  何より、そこに小瓶があったからって、
  どうして飲んでしまったのかしら!
  今までさんざん、何か食べる度に飲む度に
  大きくなったり小さくなったりして、今回だって
  頭の隅っこで考えたはずなのに……」
「え、えええ……」
大体のことはわかった──わからないなりにわかった、けど、
僕の口からは相変わらずため息しか漏れない。
僕から見たアリスの状態を思わず指摘しかけて、
口を噤む。
(ドールハウスに無理矢理身体を押し込んで
「大きくなった」って騒いでいるようにしか見えない、
  なんて──
  言えないよね、うん。
  お医者様にも、みんなの見ている世界を壊すようなこと
  しないでほしいって言われたし……)
「ええと……どうすればいい?
  引っこ抜けばいいのかな」
「そんなことしたら、おうちが壊れないかしら……。
  ウサギさんが住めなくなったらかわいそうよ」
「このままじゃ、きみもかわいそうだけど」
「そうなの。あたしもそう思うの!」
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「正しいパンの使い道」
「グレーテル、パンをもらってきたよ。
  きみもさっき食べたよね。
  晩ご飯のシチューについてた残りで──」
ばさっ、と音がした。
グレーテルの肩から毛布が、その手から「聖書」が、
床に滑り落ちたのだ。
グレーテルは小さな手を僕に向かって伸ばし、
物言いたげに目をキラキラ、口をパクパクさせながら
おぼつかない足取りでこちらに向かってくる。
(──グレーテル?)
僕はなんとなく気圧されて、後ずさりしそうになった。
次に物語に必要なアイテムであるパンを持ってきたのが、
そんなに嬉しいんだろうか。
「ほ、ほら。これ小石のかわりにならないかな。
  ちょっとずつちぎって落としていけば……。
  ──わあっ!」
がしっ、とグレーテルがパンを握る。
「──!」
次の瞬間には、僕の手からスポン!と抜いていた。
それはもらい受けるというよりも、
もぎとる、としか言いようのない勢いで──
「ど、どうしたのグレーテル。
  あ……ああああああ!?」
「……んむっ。んくんくんくんくんくんく……」
「グ、グレーテル……」
奪い取ったパンに、当然のようにかじりつくグレーテルを
僕は呆然と見守った。
「んぐんぐんぐんぐ、んっくんっくんっくんっく。
  もーぐもぐもぐもぐ、もーぐもぐもぐ」
両手で捧げ持ったパンを上からかじり進んでいく様といい、
それに従って両のほっぺたがものすごい勢いで膨らんで、
信じられない柔らかさでモゴモゴと変形する様といい──
リスのよう、といってはリスに失礼な感じだ。
頬袋がもう限界なんじゃ、と心配し始めた頃、
グレーテルは一旦パンから口を離した。
「んむ、んむ、んぐ……んくん!」
ぐにゅぐにゅ、と何回か顎と頬を動かすうちに、
たわわな頬袋はみるみる萎んでいく。
こくん、と喉を鳴らした頃には、すっかり元通りだ。
(──どういう仕組みなんだろう……)
最初こそ、職員さんの好意でいただいた貴重なパンが
瞬く間に消えていくのを悲しく見守っていた僕だけれど、
だんだん好奇心のほうが上回ってきた。
「……おいしい?」
「うん!
  ふはぁぁぁぁ……。
  ──もっふもっふもっふもっふもっふもっふもっふもっふ」
グレーテルは深い深い──本当に幸せそうなため息をついて、
またパンにかじりつく。
残り半分になったパンがゴリゴリと削れて、
あどけない頬が再びいびつな感じに膨れ上がっていく。
そうだ、リスじゃなくて鉛筆削り機みたいだ。
「んにゅんにゅんにゅんにゅんにゅんにゅんにゅんにゅんにゅ……」
(……それにしても、美味しそうに食べるなぁ)
その瞳は喜びにキラキラと輝きながらもどこかうつろで、
パンに対する執着と集中が伝わってくるようだ。
やがてグレーテルが、名残惜しそうに
最後のひとかけらを口に放り込む頃には、
僕はすっかり「まあいいか」という気分になっていた。
「んっ、んっ、んっ、んっ……もぐん!
  ふぁぁぁぁぁ……。
  ──────はっ!」
最後の一口を飲み込んで満足そうに一息ついて、
そこでグレーテルはようやく
自分の失敗に気づいたようだった。
「あ……、ぁ……。」
口元にパンのかけらをくっつけたまま、
自分のからっぽの手にじぃっと見入った後、
チラリと上目遣いで僕を窺った。
「──ごちそうさまは?」
とっさに、僕の口から出たのはそんな言葉だった。
叱るつもりはなかったけど、しつけるつもりもなかったのに。
「ご……、ご、ごちそうさま、でした……。
  ……お、お兄ちゃん、ありがとう……。
  ご、ごめんな、さ……ぃ」
「いいよ、気にしないで。
  おなかすいてたんだね。
  ──晩ご飯、食べなかったの?」
「た、食べた……」
「足りなかった?」
「……うん」
閉じる
「オデットとガーターベルト」
鳥かごは、
ふたりぶんの体重と小競り合いの揺れにきしんだようだ。
足を台に乗せて、スカートをたくしあげて、
太股の半ばまで引き上げたタイツを
ベルトで留めかけていたオデットと。
彼女を後ろから抱き込むようにして
今、まさに僕の目の前で
オデットの手からベルトの端を奪ったオディールと。
「なにをそんな、手込めにされる女みたいな悲鳴をあげてさ。
  鬱陶しいから、手伝ってやろうってだけじゃない。
  感謝されこそすれ、きゃあ!はないわ」

「だ、だって……そんなのいいの。
  わたし、いいって言った。言ったの。
  わ、わたし、自分でやる、から……できるから」
「だから、もう聞きあきたっていうの。
  あんただって、早いとこ支度を済ませて
  あのオウジサマに会いにいきたいんでしょ」

「あ……っ」
オディールが「オウジサマ」という言葉を口にした瞬間、
オデットは小さく声をあげ、全身を震わせた。
気の毒なほどにこわばっていた肩から、
急に力が抜けていく様子が、僕にも見てとれた。
なんとなく、「とろけていく」ようなぐずぐずの緩み方。
「ちょっと、やりにくいでしょう。ちゃんと立って。
  まったく、こんな一言くらいで発情しないでよ。
  そりゃね、あの「オウジサマ」は──「ジークフリート」は、
  あんたにとっちゃ待ち望んだ運命の人でしょうけど」
「ふぁ、ぁ、ぅ……っ」
オディールが次々に浴びせかけるキーワードと、
タイツのふちをグッと張りなおす仕草に、
オデットはまるで手綱を引かれているように反応している。
たくしあげたスカートを握る指先が所在なげにもぞつき、
台の上にあげた足が小刻みに揺れる。
何か物言いたげに唇がわななくけれど、
漏れるのは妖しく乱れた息づかいと、
言葉の形にならない切れ切れの声だけ。
「ねぇ、腰をへんに動かすの、やめてくれない?
  あたしはオウジサマじゃないんだけど」
「う、う、動かして、な……!
  は、早く、早くして、オディール」
羞恥と屈辱に見開かれた大きな瞳は、
焦点を失って、潤んで、ふるふると揺れて、
今にも金色の光になって流れ出してしまいそうだ。
「あたしだってさっさと終わらせたいんだけど。
  誰かさんが勝手に盛り上がるものだから、手元が狂うのよね。
  ──これで動かしてるつもりがないって、
  ほんと……なんていうか。
  あきれるほどにアレよね、あんた。本物よね」
「あぁ、ぁ。ご、ごめ……。
  ……ぅ……くっ」
オデットは涙声になりながら唇を結び、声を呑む。
彼女が身体の中に生まれる衝動と懸命に戦っているのが、
その表情から伝わってくる。
しかしオディールはその努力をあざ笑うように、
耳元にとどめの一撃を吹き込んだ。
「──本当に惚れっぽいんだから」
オデットの全身が再び、
ほとんど跳ね上がるようにビクンと震えた。
オディールを振り向くその顔によぎるのは、
限りなく「戦慄」に近いものだ。
「ほ、ほれ……?   ち、ちが、違う、わたし……」
「好きになったんでしょう。
  オウジサマを。ジークフリートを」
「違う、違うわ。
  だ、だって、昨日初めて会って、それきりよ。
  すてきなかただとは思ったけど、そんな、ち……違うの」
「隠しても無駄。──あたしを誰だと思ってるの。
  あんたに呪いをかけた、ふくろうの悪魔ロットバルトの娘よ。
  お見通しなんだから……」
オディールは赤い唇を歪めながら、
手にした金具をカチャリと弄ぶ。
そして、今度こそベルトを留めてやる──ように見せかけて
金具の先に引っかけ、挟みかけたのは、
オデットの見るからに柔らかそうな太股の肉だった。
「痛っ……!」
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「ラプンツェルの抱擁」
「今夜はお早いお越しですのね、王子様。
  こんな、月がまだ若いうちに」

「え……」

僕が驚きを口にするより早く、
暗がりに灯るラプンツェルの顔が近づいてきた。

「……あ……」

頭の中が真っ白になった。
ラプンツェルが、近い。
吐息が唇をくすぐって、ゾク、と背筋が震えた。

瞳は今にも滴りそうなほど濡れていて、
その深い海のような表面に僕だけを映している。

まばたきすら惜しい、そんな激しい熱が伝わってくる。

「でもね、どれだけ早くいらしてくださっても、
  それでも夜は短い──そう思いますの。
  昼に待って待って待ちこがれるのに、
  夜はいつも一瞬に過ぎてしまって」

上擦ってかすれる声は、蜘蛛の糸みたいだ。

絡めとられて、雁字搦めにされて、
繭の中に閉じこめられる──
甘く痺れた頭の片隅で、危険な予感がした。

でも、僕はもう指先ひとつ動かせない。
目も、耳も、肌も、ラプンツェルを感じ取ることにばかり集中して、
僕のいうことなんて聞いてくれない。

隙間を惜しむように押しつけられるラプンツェルの体は、
僕の体温に溶けてしまうんじゃないかと思うほど
とろんとした優しい柔らかさで──

「ね、王子様。ですから。
  せめてできる限りいっしょにいましょう。
  わたくしが長い長い昼の退屈に負けないくらいの
  楽しい思い出を──
  わたくし、いただきたいわ」

ラプンツェルが囁きながら僕の胸を撫でる。
腕に鳥肌が立つのを感じた。

匂いも、感触も、言葉も、ぬくもりも、
何もかもが甘くて狂おしい。
いっそ気を失った方が楽なんじゃないかと思うほど。
閉じる
「ボートでゲルダと」
岸から少し離れたところで僕らはオールを漕ぐ手を止めた。
ボートはその後も惰性で湖面を音もなく滑り続けていく。

わぁ……。

辺りを見回せば、幻想的な風景が僕らを包み込んでいた。
思わず感嘆の声が漏れ出してしまう。

頭上に輝く満天の星空は、湖水に星の欠片を振りまいていた。
水面は宝石を溶かし込んだような色合いにきらめいている。
月が放つ朧な光が湖面に漂う薄もやを浮き上がらせ、
宝石を柔らかく包む純白の薄絹のように仕立てていた。

「この風景だけ見たら、確かに『楽園』なんだけどね」

「本当にね……」

こんな光景を前にしても、ゲルダはどこか気の無い返事だった。
水宝玉(アクアマリン)をはめ込んだような彼女の綺麗な瞳は、
どこか憂鬱そうな色合いに翳っていた。

彼女の足元の船底には、彼女の「聖書」である「雪の女王」の
絵本が、ぞんざいに放り出す様にして置かれている。

「ただの気分転換でボートに乗りに来たわけじゃなさそうだね」

彼女は湖水に視線をたゆたわせたまま、静かな声で語りだした。

「知ってるかしら。
『雪の女王』では、いなくなったカイを探すために
  ゲルダが小舟に乗り込むところから、彼女の旅が始まるの」

「ああ……そう言えば、そうだったね」

僕は昔読んだ「雪の女王」のシーンを思い返していた。

確か物語では、ゲルダの乗った舟が川に流されてしまい、
そこから彼女のあてのない長い長い旅が始まるんだった。

「ひょっとして、きみは本当に
『ゲルダ』の役になりきって『カイ』を探すことにしたの?」

今朝、彼女の部屋を訪れた時に打ち明けられた事を思い出していた。
どうやら彼女は本当にそれを実行に移そうとしているようだ。

「『私』は仮初めの『ゲルダ』に過ぎないけれど。
『私』が旅立たなければ『彼』は絶対に救えないんだって──
  そう思うと、居ても立ってもいられなくなってしまって……。
  気が付けばここまで来ていたの」

ゲルダがかすかに身震いした。
自分の行動が本当に自分自身の意志によるものなのかどうなのか、
確信が持てずに戸惑っている様に僕には思えてならなかった。

「もちろん、全部『誰か』に仕組まれてるって可能性も考えたわ。
  でも……あえてその筋書きに乗ることで、相手を油断させることが
  できるかもしれないし、ね」

それは勝算というよりは、どこか願望めいて聞こえた。

  じっとしていたら「彼」を見失ってしまうのではという焦燥と、
「何者か」の思惑に嵌ってしまうのではという危機感の間で
  揺れる天秤の釣り合いを、必死に取ろうとしているのだろう。

「そう……なんだ」

僕はただ頷き返すばかりだった。

彼女が予想している以上の危険を喚起することも、
反対に慰めの言葉で不安を和らげてあげる事も、
どちらも僕にはできなかった。

彼女が一度やろうと決めたことの邪魔をしたくはなかったし、
上辺だけの気休めを言うのも、なんだか無責任な気がする。

それにきっと彼女も、それを僕に求めてはいないと思う。

ただ自分の決意を話しておける相手が必要なんだろう。
それができるのは、この「楽園」には僕しかいないに違いない。

(だからこそ「旅の始まり」には余計な存在のはずの僕を、
彼女はボートにさそったんじゃないかな……)

なんとなく僕はそう感じていた。
閉じる
「ごまかしティーパーティ」
  ぽかぽかと眠くなるほどに暖かな日差しを、
  草の匂いのする涼しい風が冷やしていく、
  つまりちょうどいいお日より。

  広い庭園の中で、一番花が多く植えられている一角の、
  その中でも薔薇のアーチが最も美しく見える場所。

「今日は特別だよ」と言われた言葉の通り、
  望んでも滅多に得られない贅沢な環境だと思う。

  その上、持ち出された大きなテーブルには
  清潔な白いクロスがかけられ、
  その上には色とりどりのお菓子が並んでいる。

「大人になって、自由にお金を使えるようになったら
  好きなだけお菓子を買って並べて、片っ端から食べてやる!」
  ……というありがちな望みが目の前で形になっているわけだ。

  けれど僕個人としては、
  嬉しさよりも圧倒される思いの方がずっと強い。

(だって……こんなのはいいからさ。
  何があってどうなったのか、ちゃんと説明してほしい)
  要するに僕は、
  オトナたちが僕たちのために開いてくれたこのティーパーティに
  露骨なご機嫌とりの気配ばかりを感じて、うんざりしているのだ。

  どれだけお日さまや風が優しかろうが、
  僕の──おそらく僕だけではなく全員の頭の中から、
  恐ろしい想像が追い出されることはない。

  濛々とキッチンに立ち込めた黒い毒々しい煙と。
  鼻の奥にへばりついて、ふとした拍子に蘇る厭な臭いと。
「黒焦げの、人の死体を見つけた」──怯えて叫ぶ声と。

(まあ、みんなが楽しめるなら、それはそれでいいんだけどさ)


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


アリス
「このキャンディ、甘いわね。
  この甘さはあたしを甘やかすわ!」

グレーテル
「もぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐ」

ラプンツェル
「グレーテル、こぼれていますわよ。
  そんなにおなかがすいていたの?」

グレーテル
「むぎゅむぎゅむぎゅむぎゅむぎゅむぎゅむぎゅむぎゅむぎゅ……」

ラプンツェル
「相変わらず、美味しそうに食べますのね。
  よかったわね、こんなすてきな席を用意していただけて」

アリス
「それにしても、ラプンツェル。
  あなた、外に出ることもあるのね。
  一生、あの素敵な塔の上の巣穴で生活するのかと思っていたわ」

ラプンツェル
「え、ええ……。
  どうしたことなのかしらね、これは。
  ──わたくしは……」

アリス
「どうしたの、起きたまま夢を見ているような顔をして」

ラプンツェル
「起きたまま、夢を……。
  ──ええ、そうかもしれないわ。
  これは、すべて、夢……」

グレーテル
「ゆ、夢? こんなに美味しいのに、夢?
  いつも食べようとすると目を覚ますのに、今日は食べられて、
  いくら食べても目が覚めないのに──夢?」

オディール
「これが夢なら、あんたは覚めないほうがきっと幸せね。
  今目の前にあるあれとかそれとか、
  あんたのおなかの中に収まったお菓子とか。
  ぜーんぶ夢なの、まぼろしなの。
  ──そう思ったら、目覚めるのが悲しくならない?」

グレーテル
「か、悲し……い。」

オディール
「ずっとずっと起きなければ、好きなだけ食べられるわよ。
  ──でもそうすると、本当のあんたはこれから何一つ
  本当のお食事が食べられないわけだけど」

グレーテル
「………………あっ。
  眠り続けていても、目覚めても……。
  わたし、なんにも食べられない……?」

ラプンツェル
「あんまりいじめないでくださいね、オディール。
  せっかくこんなに幸せそうに食べていますのに」

オディール
「それは失礼。
  あんまりに退屈な席だからさ」

アリス
「退屈? オディール、退屈なの?」

オディール
「あたし向きじゃないのよ。わからない?
  こういうのはオデット向き。
  甘いものが好きなのも、お茶が好きなのも、
  ぽかぽか陽気やガーデンパーティや談笑なんてものが好きなのも、
  人当たりがよくて意地悪じゃないのも、全部オデットの方。
  なのに、あいにくと今は昼だもんね。
  うまくいかないものだわ」

アリス
「ふうん。
  ふたりは、鏡の向こうから来たようにそっくりさんなのに。
  オディールは、どうにかしてオデットになれないの?」

オディール
「……あ?
  あはは、相変わらず頭にくるほど面白いこと言うのね。
  あんたがあたしになれないように、
  あたしだってオデットにはなれないのよ。
  ──なりたくもない」


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

ゲルダ
「──だめだわ、話にならない」

  隅の方で職員さんと話をしていたゲルダが、
  あきらめたように席につきながら小声で毒づいた。

  振り向けば、ゲルダの訴えをいなしきった職員さんが
  病棟の方へ戻っていくのが見える。
  ようやく解放されたと言わんばかりの軽快な足取りだ。

ゲルダ
「おかしい、ありえないわ、こんなの。
  だって、人が死んでいるのかもしれないのよ?
  単なる勘違いで終わったとしても、
  通報して、きちんと調べて解決しなければだめ。
  ──私、おかしいこと言ってるかしら」

  ゲルダの独り言が、悔しげにこぶしを握る仕草が、
  彼女の前で冷めてしまったミントティーが、
  和やかなお茶会を台無しにしている。

  けれど、ゲルダの心境も痛いほどわかった。
  もし「なにか」があるのなら、うやむやにされるのは恐ろしい。

アリス
「ゲルダ、ゲルダ。
  そのミントティーは冷めてもおいしいわよ」

ゲルダ
「──ありがとう、アリス」

  ゲルダはカップの中のミントティーを一気に飲み干した。
  頭を冷やそうとしているのだろう。
閉じる
先行予約イベント色紙を手に入れるチャンス再び!(FC会員限定)

イベント内容

※こちらの応募は終了いたしました。

去る4月24日、秋葉原・大阪・名古屋で同時に行った 先行予約イベント色紙を、特別に会員様向けに取り置きしておきました。

そこで、 7月13日(月)までにFC通販にご予約の上、色紙プレゼントフォームにてご応募いただいた会員様より、抽選で20名様にプレゼントを実施いたします。(※現在までに申し込まれている方も応募可能です)

なお、当選は商品の発送をもって代えさせていただきます。
会員様皆様のご予約・ご応募をお待ちしております。

応募方法

こちらの 専用応募フォーム からご応募下さい。
マスターアップ記念!コラボクリアファイル配布イベント緊急開催!

イベント内容

コラボクリアファイル配布

chien 様「ヤクソク☆ラブハーレム」(詳細はこちらから→ http://www.chien.jp/chien9/
とのコラボクリアファイルをゲリラ配布致します。

※こちらの画像は片面のみとなっております。
※反対面はchien 様の図柄となります。

開催場所と日時

アキバ☆ソフマップ1号店 店頭にて

日付:2015年6月26日
時間:OPENより配布開始(無くなり次第終了)
4/24 秋葉原/大阪NEW!/名古屋NEW!にて、Wイベント開催!

イベント内容

1、クリアファイル配布会!

FC会員様にはイベント後に、郵送にてお送りいたします。

2、色紙交換イベント!

「フェアリーテイル・レクイエム」をご予約いただいた方に、描きおろし色紙をプレゼントいたします。
  • 4/24以前のご予約も有効です。当日の会場に予約券をお持ちください。

開催場所

ソフマップアミューズメント館

時間:OPEN〜CLOSE
店頭POP(クリックで拡大表示):
クリアファイル
色紙

ソフマップなんば店ザウルス1※店舗窓口にて

時間:OPEN〜CLOSE
店頭POP(クリックで拡大表示):
クリアファイル
色紙

AMP.net大須店※店舗窓口にて

時間:OPEN〜CLOSE
店頭POP(クリックで拡大表示):
クリアファイル
色紙

修正パッチ

『フェアリーテイル・レクイエム』をお買い上げいただきまして誠にありがとうございます。

この度、製品内の細々とした不具合を解消するための修正パッチをご用意いたしました。
以下をご確認の上、できるだけプレイ開始前にご適用ください。

★ご注意★
  • DMM.com様にてDL版をご購入の方は本修正パッチの内容が適用済みです。
  • 弊社FC通販にてお買い求めのお客様は、添付のFC特典シナリオを適用していただければ、本修正パッチと同じ修正が施されます。

適用方法や内容の詳細などは、こちらの詳細テキスト(右クリックで保存がおすすめです)をご一読ください。

『フェアリーテイル・レクイエム』修正パッチ
ファイル名(サイズ):FR_patch_v1_1.exe (8.47 MB [8,889,893 バイト])
MD5:6B6C7D87C2E2901E9DC25D6D164D3EFF
ファイルリンク
更新日時:2015/07/24

体験版

ミラーサイト様にご協力いただき、体験版を配布しています。
(ミラー先は順次増加の予定です)
フェアリーテイル・レクイエム体験版
ファイル名(サイズ):FairyTaleRQTrial.exe (915 MB [959,879,041 バイト]) MD5:E43851EB55898DA437DA74D075640B94
こころんにあるみらー 掲載ページアドレス ファイルリンク
Holyseal 〜聖封〜 掲載ページアドレス サイトへ移動してからのダウンロードをお願いします。
すえぞうのギャルゲー補完計画 掲載ページアドレス ファイルリンク
更新日時:2015/06/20 18:55

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ヒロイン&主人公


主人公

アリス

グレーテル

オデット

オディール

ラプンツェル

ゲルダ

その他


イケノ

黒の少女

ヒロインSDバージョン


SDアリス

SDグレーテル

SDオデット

SDオディール

SDラプンツェル

SDゲルダ
特典情報
予約特典(全店舗&FC 共通)
「フェアリーテイル・レクイエム」オリジナルサウンドトラック
※クリックで拡大
ドラマCD「インゲルの堕ちた地獄」
登場キャラクター:アリス・グレーテル・オディール

あらすじ

 この「楽園」にはかつて「パンを踏んだ娘」の主人公である「インゲル」もいたという。ぬかるみを渡ろうとしてパンを足場にしたために地獄に堕ちた少女。救われないインゲルは「楽園」の乙女たちを妬み、隙あらば地獄に引きずり込もうと今も徘徊しているらしい。

 そんな噂話に怯えるアリスとグレーテル、馬鹿馬鹿しいと一笑するオディールだったが──

B2タペストリー
※クリックで拡大表示します。
6PWビジュアライズブロマイド
※クリックで拡大表示します。
ドラマCD「天国のウィスキーボンボン」
登場キャラクター:ラプンツェル・オデット・ゲルダ

あらすじ

 オディールの意地悪で「聖書」を失ったオデットは、捜し歩くうちにラプンツェルの部屋にたどり着く。客人ふたりのためにお菓子を振る舞うラプンツェルだが、それは度数高めのウィスキーボンボンだった。

 濃厚なウィスキーは普段おしとやかな3人の少女を、深い深い酩酊へ誘い──

テレカ
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B2タペストリーマイクロファイバータオル(20cm×20cm)※変更になりました
※クリックで拡大表示します。
テレカ
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B5マイクロファイバータオル
※クリックで拡大表示します。
Liar-soft FC
アペンドディスク「禁断の黙示録」

あらすじ

 依然として記憶を失ったまま寄る辺ない日常を送る名無しの少年。ある日彼は古ぼけたノートと出会う。「禁断の黙示録」と題されたこの1冊が、この純朴な少年の運命を大きく捻じ曲げてしまうことを、まだ誰も知らない──

詳細
タイトル 『フェアリーテイル・レクイエム』
ブランド Liar-soft
企画ライティング 海原望 ほか
原画キャラクターデザイン 大石竜子
BGM さっぽろももこ
メインテーマ Rita
ジャンル メルヘンミステリアスホラーADV
販売形態 WINDOWS−PC向けパッケージ
発売時期 2015年7月24日発売予定
価格 8,800円(税別)
ボイス ヒロインフルボイス
公式サイト https://www.liar.co.jp/
スペック
対応OS 日本語版 Windows Vista以降
CPU PentiumV 500MHz以上必須/PentiumV 1.0GHz以上推奨
メモリ 1.0GB以上必須/2.0GB以上推奨
グラフィック 1280×720/フルカラー
サウンド DirectSound互換のサウンドカード
HDD容量 4.0GB