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──星々は見つめます。 |
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もしも…。 星々の瞬きが誰かの生の軌跡そのものであるならば。 ならば今宵もわたしは導きます。 この開放された砂漠から遠く離れた遙かな異郷の空の下で、ああ、今まさに輝いて、けれど自らの眩さにも尊さにも振り返ることのない、儚い星を。星々の瞬きは数限りなく、そして、命あるものの輝きも同じくあるなら、眩さも、尊さも、きっと、変わることなどあるはずもなく。 遠く、遠くの空の下で瞬いて。 ここではない場所。 それは、砂漠都市ヴァルーシアより遠く離れて、しかし同じ色の空の下でのこと。 そこに── ──そこにもひとは住まうのです。 ならば今宵もわたしは導きましょう。 空は繋がっている。ですから、こうして、わたしは、今も紡ぐこともできます。幼子の姿ならぬ2柱のアルトタスとヘルメースに導かれるままに。黒の王と、邪悪充つる《時間人間》の源たる虚空黄金瞳に見つめられるままに。 その頭にあらゆる知識と情報とを埋め込まれた彼女のことを。 あらゆる機関の重みを細い肩に受け止め続けた彼女のことを。 古き王にかつては統べられたところ。 砂漠都市にとっては異境となりましょう。けれども、機関と排煙に充ちた大国たる北央帝国とも王侯連合とも異なる、機関文明圏の人々からはおとぎ話のように語られる青き空有する《大辺境》の一角。この砂漠都市も、その果てに位置するものではありますが。ひとは言うでしょう、かの王国群こそ、ふるきものの息吹を今なお色濃く受け継ぐシュプララプセールならぬ身のひとにとっての唯一の園であると。 彼女にとっては目にしたことのない国であることでしょう。 けれども。 だからこそ彼女は、かの国へ導かれたのかも知れません。たとえそれが、自ら決めた旅の道筋でなかったのだとしても。彼女の慕う、彼女のそれとよく似ているけれども異なる黄金瞳を有する亡国の王子とその仲間たちが決めたものであったとしても。 彼女は、レンの大陸の其処へ。 ──ですから。 ──星々の見つめる、彼女の、その後の物語を。
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[Valusia of shine white -what a beautiful hopes-] Liar-soft 26th by Hikaru Sakurai / Ryuko Oishi.
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