※このウェブノベルには音声パートが含まれます。ご試聴いただく際にはご注意ください。

















 ──星々は語ります。
 ──たとえば、砂漠の空を覆う白色の仮面が消え去った後にも。

















 

 もしも…。

 星々の瞬きが誰かの生きる証であるならば。
 その尊さは、決して、誰にも穢されることはないでしょう。

 ならば今宵もわたしは導きます。
 星々の紡ぐままに。
 物語の拓くままに。

 この開放された砂漠から遠く離れた遙かな異郷の空の下で、ああ、今まさに輝いて、けれど自らの眩さにも尊さにも気付くことのない、孤独な星を。星々の瞬きは数限りなく、そして、命あるものの輝きも同じくあるなら、眩さも、尊さも、きっと、変わることなどあるはずもなく。

 遠く、遠くの空の下で瞬いて。

 ここではない場所。
 ここではない異邦。

 それは、砂漠都市ヴァルーシアより遠くはなれた異邦。
 数多の鋼鉄機関によって大地を埋め尽くされて、噴き上がる灰色の排煙に空のすべてを覆われてしまった。もう、今よりも、ずっとずっと前に。
 かつての砂漠の人々のように、空の青色を失ったままであるところ。
 数多の王が集い、ひとりの強大な王を頂く、カダス列強のひとつ。

 そこに──

 ──そこにもひとは住まうのです。
 ──そこにも星々は輝くのです。目に見えずとも。

 ならば今宵もわたしは導きましょう。
 星々の瞬くままに。
 物語の進むままに。

 空は繋がっている。ですから、こうして、わたしは、今も紡ぐこともできます。幼子の姿ならぬ2柱のアルトタスとヘルメースに導かれるままに。黒の王と、邪悪充つる《時間人間(チクタクマン)》の源たる虚空の黄金瞳に見つめられるままに。

 黒炭と化した両腕を天へと掲げた彼女のことを。

 ひとり、王侯連合なる国へ至った彼女のことを。

 王たちの統べる大国。
 名は、王侯連合。

 砂漠都市にその手を伸ばした北央帝国とは異なる、けれど文明の起源を同じくする、されども文化は異なる異邦の国。王侯連合。ひとは言うでしょう、かの国こそが、帝国に比肩する唯一の国なるものであると。西享(Earth)の名を持つ更なる異邦を除けば、このカダスの名のを有する世界においては、帝国に抗しうる唯一の巨大な“力”であると。数多の王と諸侯によって選ばれし、偉大なる王こそが、その“力”を振るうのです。

 地上で最も神に近い者であると、西享の人々は言うでしょう。
 神を知らない人々さえも。
 神を崇めない人々さえも。

 だからこそ。

 だからこそ彼女は、かの国へ赴いたのかも知れません。たとえそれが、結社なるものが彼女に下した命令なのだとしても。神なるものに、惹かれるが故に。それが意図したものでるにせよ、そうではなかったにせよ。
 かつて、この砂漠の空を覆う白色の仮面が消え去った後に。

 彼女は、世界の彼方のかの国へ。
 自らの意思で。自らの想いをきっと胸に携えたまま。

 ──ですから。
 ──ここから先は、わたしではなく、彼女自身が紡ぐことでしょう。

 ──星々の見つめる、彼女の、その後の物語を。





[Valusia of shine white -what a beautiful hopes-] Liar-soft 26th by Hikaru Sakurai / Ryuko Oishi.
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