「いい空! いい雲、いい風、それに、いい香り!」 「はは。随分とご機嫌な様子だな。気に入ったかいお嬢ちゃん、初めての海は」 「はい!」 |
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滑らかに肌の上を通り過ぎる海風のただ中。 ──きれいな空。海。 自分が進む先を。 進めども進めども変わらない景色? 初めて目にする雄大な入道雲はひとの表情のように刻一刻と姿を変えて、風はその勢いをひとの言葉のように強弱をつけて、海原の波はひとの心のように形を変えながらそれでも揺るぎなくたゆたう。 ──今にも溢れ出してしまうそう。 「ナナイ。あたし、行けるよね。 「あん? どうしたお嬢ちゃん?」 「ううん、何でも!」 声を張りながら。 きっとまた会えると言ってくれた踊り子・ナナイ。 ああ、果てなき海原を往く船の上で。 ──あたしは。まだ言っていないことがある。 それが恋なのかどうかミミルは分からない。 でも、それでも、ミミルは今、晴れやかな気持ちで海原の果てを見つめられる。 たとえ、叶えられない想いなのだとしても。 「あたし……」
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[Valusia of shine white -what a beautiful hopes-] Liar-soft 26th by Hikaru Sakurai / Ryuko Oishi.
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