■星継駅年代史(未来編)
(以下、本編より抜粋)
それは航宙士の夢―――
宇宙のどこかで、出会った誰かとの会話の記憶―――
―――まさかあんたが生きていて、そして出会えるなんてねえ。宇宙ではなにが起こったって不思議はないって言うけれど、さ―――
―――宇宙は、どこまでも広い。会えたのは、ま、奇跡ちうやつよなあ―――
―――アンタらも、あの駅から上がってきたってかい。
―――アンタ達が発った時、駅はどうなってた?
―――わたしらが発つまで、駅は宇宙とは、断たれていたんだよ。どういうわけかはしんないけど。
―――そんな、ことが―――
―――ま、俺らのあとがどうなったかは知らねえが、な。
―――どうでも、いい。どうせあそこには、アタシが知っている奴、アタシを知っている奴、誰一人いないだろうし。
―――長く、離れすぎた。もう、飛ぶ気もなくしちまうくらいに、さ―――
―――あんたは、疲れてるだけなんだよ。当たり前だよね。他のみんなは、みんないなくなってさ、ずっと一人で宇宙を旅してたんだ。
―――うん。疲れてる時は、故郷で骨休めってのが一番だ。
―――よせやい。そんな柄じゃないのさ。だいいち―――
―――帰り道が、判らないんだ―――
―――いいや、航図はある、データは揃ってる、アタシの航宙艇は、どんな長旅にだって耐えられる。
―――だけどね、どんなに還ろうとしても、駄目だったんだね。何でか、正しい道から逸れちまうのさ。
―――そりゃあ、あんたの縁が、あの駅とは、いったん切れちまったからなんじゃねえの?
―――そうかもね。だったら、余計還ったって意味がない。
―――でも、ほんとはさ、一度くらいは、もう一度大地上の地面、踏んでみたいんじゃないの、ゴドー。
―――そうかも、ね。でも言った通りだ。
―――アタシの帰り道はわやくちゃにこんがらがっちまって、解きようがないんだってば。
―――俺らが教えてやらぁな、帰りの道筋を。
―――わたいらは、まだあっちに帰るつもりはないけれど。あんたは。
―――友達との約束、あるんだろ?