コローネのお部屋探訪・第3回
「ソヨンの個室」「アルマの個室」「アイーシャの個室」



 暴行事件発生から2週間。
 船内にしかれた緘口令は固く、多少の事情を知るであろうヘレナも、さすがにニコルの居る前では「性的暴行」の言葉は漏らさなかった。
 情報通を自認する学生の間で「ファースト女子がなにがしかの理由で退船」という噂が流れたりもしたのだが、ご丁寧にも「悲恋の末、悲劇」という結末つき。PS情報部による誘導なのは瞭然だ。

 ポーラースターが南洋に入る頃には手も尽き、ニコルと俺は調査を放り投げて日常を謳歌することにした。

 そんなわけで、俺はニコルをとびっきり退屈な宗教論の講義に置き去りにして、巡回兼、気晴らしの散歩中。
 隙を見つけて施設紹介と洒落込もうかと……お!
 施設案内にうってつけの人物を発見。今日は彼女について回り、俺が入ることが難しい学生個室を覗いてみよう。それがいい、イイんだってば。

「パス」
 わ! わー! ナイスパスです。イライザさん。
「センタリング」
 ファンタズィークです。イライザさん!
 部屋の隅にまとめられたクリーニング行きの衣服が、ボクの頭に積まれていく。

 洗濯物回収をこなしていた学園メイドのイライザさんは、ボ、俺の同行を快く認めてくれた。ついでに仕事を手伝うのは男として当然のことですよね、イライザさん。

 最初の部屋は、やたら猫々しぃ飾り付けで溢れていた。
 この匂いはニコルのクラスメイト、やたら元気で面倒見のいいソヨンのものだ。
 猫が好きなのか、へー、ふーん。
「シュート」
 はーい、この籠に入れるんですよね。イライザさん。
 ところでこの部屋の空気、そこはかとなく辛くはありませんか?

 

 2室目はドアを入ったところで「待て」をされた。
 この部屋の絨毯は毛足が長く、俺の毛が落ちると掃除が大変になるのだ。
 ニコは相棒だが、イライザさんは女王だ。その命令に逆らうのは難しい。

 この部屋の匂いにも覚えがある。いつも悠然、いや、おっとりとした御嬢様、アルマとかいう学生のものだ。
 親の溺愛っぷり溢れる高級品で飾られた室内は、改装も手間がかかってる。

「もう、追いつかれた」
 先行してベットメイクしていたらしいベスが、がっくりと肩を落とした。
「早いよ。イライザ」
 口を尖らせて子供のように拗ねる。でも、イライザさんより三つも歳が上らしい。
「手伝うわ。ベス」
 イライザさんはにこやかに宣言して奥のベッドルームに向かい、あっと言う間に戻ってくると、ついでにと室内備品のチェックをこなしていく。
 仕事を分担して動く二人の姿は、ポルカでも踊るようで楽しげだ。ボクも何か手伝えませんか〜。
「コローネ、Step Back」
 ワワン、いつの間にか体が前へ! ごめんなさい、イライザ様。

 十数室を回り、最後に訪れたのはジャングルのような部屋だった。
 この匂いは……誰だろう。知らない匂いだ。

「洗濯物2枚、ベッドメイクは必要ありません、掃除は簡単に……か。仕事は楽だけど、メイドとしては寂しいね」
 扉の横に置いてあった連絡メモを読み上げたベスが、腰に手をあてて感想を漏らす。
「ご自分でこなしておられるんでしょう。自立心の強い方なのよ、きっと」
 イライザさんはコメントを返すと、洗濯物を回収するためにバスルームへと向かっていった。

 たくさんの観葉植物と、観賞魚。心理分析なんて出来はしないけど、この部屋の主は寂しいんじゃないのかな。
「魚を食べてはダメよ。コローネ」
 そんなことしないよ、ベス。食べ甲斐はありそうだけど。

「これで、午前の業務終了〜」
 職員用通路の運搬用ベルトコンベヤーに荷物を置いたイライザさんとベスは、ほうっと同時にため息をついて、顔を見合わせた。
「ベス、サンドイッチバスケットを頼んでおいたから、庭園で食べましょう」
「素敵! って、いつの間に頼んだのよ」
 本当にいつの間に頼んだんですか、イライザさん。
「いいわ、着替えてくる」
 噴水前、と狭い通路を遠ざかるベスに集合場所を伝えたイライザさんは、ボクを見てニッコリ笑ってくれた。
「コローネ、貴方も行くでしょう。ニコル様に許可を頂きに参りましょう」
 ホントデスカっ! ボ、いや、オレなんかでいいんですかイライザさん。
 ついてきますですよ。どこまでも!

 学生に目立たないよう、庭園の隅で開かれた昼食会は素晴らしく、きっちり3人分揃ったサンドイッチは最高で、イライザさん達の会話は心地よかった。
 ニコルの方も、カフェで杏里と二人っきりになれたらしくて上機嫌。
 俺達は揃ってニヤニヤしながらベッドに入り、幸せを噛み締め眠りについた。

続く


■このコーナーでは、アンエピックで新たに追加・修正されたポーラースターの内装を毎回紹介していきます。第4回(6月下旬更新予定)は「空中庭園」「ニキの個室」をご案内いたします。お楽しみに。

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