コローネのお部屋探訪・第2回
「杏里の個室」「
ヘレナの個室」



 今日こそは学園内の案内をする!

 そう決意して早起きした俺だったんだが、どうも学園船の空気がおかしい。
 PS(ポーラースター・セキュリティ)
はしきりに無線に耳を傾け、教員たちは小走りに駆けずり回っている。

 始業時間の直前に起きたニコルも、おかしな空気を嗅ぎ取ったようだったが、思いのほか厳しい緘口令に阻まれて情報を手に入れることが出来なかった。

 同伴が認められている環太平洋史の授業についてきたものの、鼻がむずむずして落ち着かない。

 俺は机につっぷして眠るニコルを残して、船内を見回るため授業を抜け出した。

 まずは鼻の利く、あいつの所に向かおう。

 後ろ足で立って鼻でチャイムを押すと、部屋の主はインターホンも通さずにドアを開け、俺を部屋に迎え入れた。

「やあ、コローネ。一人かい?」

 ニコルが一緒じゃなくて残念かい?

 内装費用のほとんどをお風呂に使ってしまったため、杏里の部屋は本来の設備にほとんど手を加えていない。

 石鹸とバスキューブの匂いが交じった空間は不思議と居心地がよくて、散歩の途中で立ち寄ることも多い。

 
 スープ皿に注いだミルクを床に置いた杏里は、窓際のソファーに座って、ノロノロと靴下を履き始めた。

「今日は朝からざわついてるね。鼻がむずむずってするよ」

 さすがだ。杏里が猟犬として生まれていないなんて、神様も悪戯がすぎる。

「まあ、気にしてもしょうがないか」

 ……まあ、そのこだわらなさってのが人間に生まれた理由なのかもな。

 結局、杏里は勘以上の情報を持ち合わせていなかった。
 カナエの元へ向かう杏里と一緒に部屋を出た俺は、そのまま次の場所へ足を向ける。

 勘がダメなら、次は確実性。
 固い情報が集まる場所と言えば、あそこしかない。

「一人で散歩? もうすぐ授業だから、あまり遊んであげられないわよ」

 水が入った銀皿に、クッキーを添えて出したへレナの表情が固い。
 自称とはいえ、学園の綱紀に心を砕くヘレナには、わずかなりとも情報が伝わっているのだろう。

 聞きたい情報があるときは、黙って待つのも手だ。相手が犬なら油断して口も滑る。
 俺は、その時を待って目の前のクッキーを口に入れた。

 3つ目のクッキーを噛み砕いた時、ソファーに置いた花瓶の水を替えたヘレナが口を開いた。

「……下級生の子が襲われたらしいの……」

 襲われた?

「どうもね。せ、性的な暴行らしいのよ」

 性的暴行? ポーラースターで!?
 ヘレナは机の上に飾った写真立てを持って、そこで笑う人物に語りかけるように言葉を紡ぐ。

「不安だわ、堪らなく胸騒ぎがする……」

 寮の廊下を駆け抜ける。
 乙女の花籠、H.B.Pで性的暴行?
 そんなトラブルが起きるなんて、考えもしなかった。

「不幸はひとりではやって来ない……なんてことはないわよね」

 俺を送り出したヘレナの呟きが、耳の奥に暗く反響している。

 早くニコルの顔が見たい。
 こんな不安は置いてきぼりにしてしまおう。
 大廊下に出た俺は、さらにスピードを上げて駆け出した。

続く


■このコーナーでは、アンエピックで新たに追加・修正されたポーラースターの内装を毎回紹介していきます。第3回(6月中旬更新予定)は「ファン・ソヨン」「アルマ・ハミルトン」「アイーシャ・スカーレット・ヤン」の個室をご案内いたします。お楽しみに。

ホームページのトップへ

サフィズムトップへ