■「白光のヴァルーシア」発売日記念更新

〜ある夜、迷宮酒場にて〜

アナ「えーっと。それじゃ、ハツバイビおめでとう〜!」
ラクシュ「おめでと〜! よく分からないけどお酒呑めるならなんでも大歓迎よ」
カシム「おめでとう。ええと、何かのお祭りらしいね」
ランドルフ「うむ。古今東西に伝わるハツバイビとは常に目出度いものであるからな」
アナ「聞いたことないけど」
カシム「うん。ないね」
ランドルフ「今夜は特別な酒を作ってやるぞ。異邦語ではカクテルという名前がある」
アナ「ふーん?」
ランドルフ「さあ。メニューだ。選ぶがいい」
アナ「じゃ、あたしはこの《赫の微笑》で」
カシム「僕は《赫の溜息》で」
ラクシュ「なんでふたりとも赤攻めなんだか。じゃ、こっちは《蒼の雫》ね」
ランドルフ「ああ、任せておけ。ではすぐにお前たちのためだけに酒を作ってやろう」


【 蒼の雫 】

ラクシュ「へ〜〜。綺麗じゃない。いいね」
アナ「光ってる! わあ、これ、どうなってんの?」
ランドルフ「フェルミのかけらが混ざっているのかも知れない」
カシム「フェルミ?」
アナ「なんでもいいよっ。綺麗〜かわいい〜」
カシム「かわいい、かな?」
ランドルフ「では次の酒だ。カシム。お前のためのカクテルをすぐに出してやろう」


【 赫の溜息 】

カシム「すごいな。色鮮やかだ。それに、うん、赫の色がいい」
アナ「中に入ってるのって葡萄?」
ランドルフ「そんなようなものだ。さあカシム、呑むがいい。今日はハツバイビだ」
カシム「いただきます。僕らアデプトは、酒に酔うことはないけど──」
アナ「いいのいいの。お祭りなら気分が大事さ。さ、ぐーっと」
カシム「ね、姉さん、そんな無理に呑ませなくても…んぐ…ん…」
アナ「おいし?」
カシム「こ、これは、お酒の味よりも種の感覚が強くて…。そ、それに、舌が」
アナ「舌が?」
カシム「舌がちょっとぴりぴりするね」
ラクシュ「出す直前に何か入れてたわよね。白い粉」
ランドルフ「隠し味だ。ひとの身であればたちまちのうちに大脳が蕩けているだろう」
カシム「そ、それってまさか──」
ランドルフ「さあ。次はアナ。お前のための酒だ」


【 赫の微笑 】

アナ「かわいい〜!」
カシム「姉さんに合ってるね。赤色に、そうか、ギモーヴが浮かんで」
ラクシュ「えっ。ギモーヴって確か」
ランドルフ「異邦の菓子で元は薬だ。地域によってはマシュマロと呼ぶこともあるが」
アナ「う……マシュマロ苦手なんだよね……」
ランドルフ「そう言わずに呑んでみろ」
アナ「いただきまふ〜」
カシム「ね、姉さんそんな、鼻をつままなくてもいいのに」
アナ「ん……もぐ……ごく……」
カシム「どうだい?」
アナ「マシュマロが、うん……お酒の水気を吸って……硬いっていうか」
ランドルフ「新食感だ」
アナ「おいしいとはいいきれないのさ! ランドルフっ!」
ランドルフ「うむ。なにぶん元狂人のすることだからそういうこともあるだろう」
アナ「なにそれ!?」
カシム「まあまあ。それじゃ、二杯目からはシードルで頼むよランドルフ」
ランドルフ「面白みがないがよく冷えたものがある。機関冷蔵は偉大だ。料理も出そう」

アナ「あっ。砂鶏の串焼。これ好きなんだよね〜」
ラクシュ「奥の丸くへこんだお皿に入ってるものはなによ?」
ランドルフ「あれはエスカルゴという異邦は西享の生き物で、まあ甲殻類と言うべきか」
カシム「聞いたことがあるな。確か、異邦の、食用に育てられたカタツムリとか」
アナ「カタツムリ食べんの!?」
カシム「そういえば、姉さんはカタツムリあまり好きじゃなかったね」
アナ「うにょるうにょるしてるの、ちょっと苦手なのさ。だって、うにょるだよ?」
ラクシュ「はいはい。ま、美味しいけりゃ何でもいいじゃない。ハツバイビおめでと♪」
アナ「そうさね。おめでと〜♪」
カシム「おめでとう」

 

        ◆        ◆        ◆

 

〜同時刻、砂漠のとある場所にて〜

ルク「ハツバイビ。ぴ」
セベク老「うむ。今日はハツバイビなる遠き彼方の祭日であるとの話だが、うむ」
ミミル「異形種ばっかり集まって、なに? どうしたの?」
ルク「ハツバイビなの。ぴ」
ミミル「ルッ君、ハツバイビってのが何か知ってるの?」
ルク「ぴ。しらない。ぴ」
ミミル「知らないんだ。ん〜、でもいいや、ルッ君かわいいし!」


【 ルク(?) 】

ルク「ぴ」
ミミル「あれ…? ルッ君、何か、いつもと感じ違う?」
セベク老「頭身がちょっと変わっておるのじゃないかね。ふむ」
ミミル「そうだっけ。頭身…」
セベク老「確かこれぐらいであったはずだが」


【 ルク(?) 】

ルク「ぴ」
ミミル「うん。違うよね、これルッ君じゃないよね。黒いもんね」
セベク老「そうかの?」
ミミル「オウサマペンギンって書いてあるしね? 違うよね?」
セベク老「これはこれで可愛いものだろうと思うのだが、そうか、別物だったか」
ミミル「あれ…? おじいさん、あなたもさっきと随分姿勢っていうか、何か…」


【 セベク老(?) 】

セベク老「なにかね?」
ミミル「あれ? 服は? なんでおじいさん裸になっちゃってるの?」
ルク「セベクのじいちゃま、はだかで、ねてるの。ぴ」
ミミル「だよね。さっきは服着てたっぽいよね? 何で?」
団長「なんだなんだ。さっきから騒がしい。セベク老、何の話をしてるんだ」
セベク老「おや。団長ではないかね」


【 雑伎団団長(?) 】

団長「ゲコ」
ミミル「頭身っていうか、その、あの、可愛くなっちゃってるよね」
団長「元々可愛らしいこの団長をつかまえて何を言っとるんだね、お前さんは」
ミミル「でも、肌もツヤッツヤになってるし、可愛くなっちゃってるしぃ」
セベク老「確かにもっと嫌な感じの体表色だった気がしないでもないな」
ミミル「だよね。違うよね、何だろ。ハツバイビって何かヘン!」
ルク「ぴ。でも、ミミルも、ちょっと、いつもとちがう…」
ミミル「え?」


【 ミミル(?) 】

ミミル「あれ?」
ルク「ぴ。ミミルに、食べられちゃいそう…」
ミミル「や、やだな。あたし、ルッ君食べたりしないよ?」
セベク老「しかし確かに何か姿が違うような気がしないでもないとも言えなくもない」
団長「ゲコ」
ルク「ぴ」
ミミル「シャー」
セベク老「よし、ここは、視覚的に分かりやすくしてみよう」

〜しばらくお待ち下さい〜

 

 

 ↓おまたせしました↓

 

「ぴ」
「ゲコ」
「シャー」
「よし、成功だ」
「えっ。な、なにが成功なの!?」
「ハツバイビとは特別なものだからこういうこともある」
「は、早く元に戻してよ〜! シャー!」
「でも、あんまりかわらない。ぴ」
「ルッ君はよくてもあたしはヤなの〜!」
「ゲコゲコ」
「まあ一時的なものだよ。いまはこの祖先の姿を楽しもう」
「楽しんだらルッ君たべちゃうでしょ!?」
「ぴ!?」
「ゲコゲコ(ぴょ〜〜ん)」
「逃げた!?」

※『白光のヴァルーシア』本日発売です!
※みなさまには、先祖返りの危険はないと思われますのでご安心ください。




 

 

★白のおまけ



「あそこのひとたちうるさいなあ…」

(異形種《鼬鼠》の群れがこちらを見ている!)




[Valusia of shine white -what a beautiful hopes-]
Liar-soft 26th by Hikaru Sakurai / Ryuko Oishi.

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