──たゆたう“水”が“かたち”となって。
  ──黄金瞳に見つめられるままに、“それ”は、白銀色の髪の少女に寄り添った。

 

 ──自分を閉じ込めていた“塔”の暗がりから出されて。
  ──“それ”は、少女と共に走った。

 ──もうひとりの、鋼で出来た黒い少女も一緒に。
  ──“それ”は、懸命に走った。

 ──走って、走って。
  ──そうしていると、やがて少女ふたりは立ち止まった。

 ──そこに。
  ──“それ”が恐れていたはずの王が、見慣れぬ“かたち”で立っていた。
  ──“それ”を喰らい殺すはずの王は、ただ、静かな視線を向けるだけで。

「飛空艇を用意した。行け」

「はい」

「ち、ちょっと待って。待ちなさいよ。ジェイム、ズ……はあ、ふ、は、はぁ……あたし、たち、ずっと走って……まだ、息が苦しく、て……追跡者もいないのだから、少し、休ませて……けほ、けほ、そ、それに、あたしは、まだ……」

「時間はない。行け。セバス」

「はい。了解しました」

「ま、待って……ちょっと、だけ……」

「ワン」

「何だそれは」

「何って、あなた、見てわからないの、いぬ……」

「黒い」

「黒い、けど……ぜ、はぁ……」

「西部イングランドで見た犬の体格は、この4倍はあった筈だが」

「ワン」

「あるじ。これは犬です」

「到底イヌには見えん。まあいい。メアリ・クラリッサ。お前のことは、折りをみてロンドンへ送り返す。それまではセバスと同行しろ。セバス。此よりはこれを守れ」

「はい。了解しました」

「ワン」

「お前には言っていない」

「仔犬くん、を、にらまない、で、よ……ぜは、ふ、は……おびえ、ちゃう……」

「ワン」

「……」

「あるじ。自動飛行中の飛空艇、現在地を確認できました。移動開始します」

「行け」

「はい。了解しました」

「ち、ちょっと、待っ──」

「ワン!」

 ──“それ”は、少女に寄り添って。
  ──“それ”は、王が、既に    いたことを理解して、少し、泣いた。

 

 























[Sharnoth of pitch black -what a beautiful tomorrow-] Liar-soft 24th by Hikaru Sakurai / Akira.
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