下着──

ランジェリー。アンダークロース。インナー。インナーウェア。この時代、異境カダスとの交流に伴って発生した「機関革命」によって過剰な発達を迎えた人類文明は、本来の“我々”とは異なる文化・歴史を歩んでいる。それは史学・科学の分野のみならず服飾史においても大いなる変化を遂げているのであって、つまりは、下着の発明や発展も“我々”のそれとは異なっているという訳。


1905年現在の英国を例に挙げれば、貴族やある程度裕福な中流階級の子女の間では、前世紀からコルセットが用いられてドレス姿の際の腰の細さを際だたせているし、コルセットを用いないながらも“美しく”見せられると謳ったポワレ・ドレスも決して主流ではないけれど流通中(市場の8%にまで至った)。フランスから渡ってきた補整下着も結構な人気。機関製紡績機械の発展によってレースさえも大量生産させることに成功しているため、キャミソールを着けている女性も、統計では既に英国人女性の10%に及ぶ。


(やはり“我々”の服飾史とは正確には一致していない)

(ちなみに、ひとりで着られる機関機械式コルセットが1889年に発売されたものの、加減がきかずに気絶する女性が続出したため即発売と着用が禁止になった。なお、英国ではなく、フランスでのこと。1905年現在では、フランスでは簡易着脱式の補整下着、ファウンデーション/Fond de robe類が隆盛)


男性向けの綿製シャツを下着として用いる(いわゆる“我々”で云うところのタンクトップに酷似)女性もいるにはいる。軍務や警務に就くような女性たちには、保温性と吸汗性に優れた肌着として「シャツ」が大人気。というのも、インド戦役やアフガン鎮圧の際の英国陸軍の女性兵士たちに支給されたのが始まりであり、多大なる好評を受けて現在に至る。所属によっては現在でも支給品として定められている。デイリーメイルの某記者は女性警官や女性軍人のインナーシャツ姿を撮った篆刻写真の特集を組もうとして編集長に絶賛されるも経営者の猛反対に遭い、1905年10月現在、減給処分中。


ブラジャーについて。キャミソールやドロワーズと同じく、やはり既に発明こそ成されているものの、それらに比べれば普及率は1%未満とごく低い。異境たるカダス地方の一部では既に普及しつつあるものの、ただ、コルセットによる細く美しいシルエット・ラインが好まれる英国や欧州ではまだまだ一般的とは呼べない。布だけで構成されたブラジャーは、付け心地もいまいち……というのが定評であるものの、実のところカダスのブラはワイヤー入りの優れた機能性を持つものであり、「一度つけてしまうと病みつき」とレイディ・エイダは親しい相手に語っているとかいないとか。……いる。


ニッカー、パンツ、パンティ、ショーツに類するものについて。

英国では未だドロワーズが主流(およそ60%以上)ではあるものの、うん。パンツ。パンティ。カダスにはある。あるはず。ある。英国の場合、当初は異境カダスよりの舶来物としてささやかに発売されている程度だったものの、その利便性から、現在では機関工場による大量生産が行われ、大規模に発売しているとかしていないとかしているとかしていないとか──

ううんどっちだ──