タバコのおまけ。
この時代、スナックのかわりにタバコにおまけがついているのであるが、中身はカードの類ではない。美女の篆刻写真カードが入っていたのは一昔前まで。現在は模型が主流。精密なモデルで、大人にも子供にも大人気。

……子供に大人気なのである。本来は大人の男への学術的、碩学的スタイルをちょっぴりかじった風に表現するアイテムだったこの「おまけの小型模型」は、当然、当時の欧州の子供たちの心の奥底に眠る「ロマン」をかきたてた。

たとえば女の子であればやはりレイディ・エイダの篆刻写真を元に(肖像権を無視して)作られたエイダ・モデルやカダス風レディ、プリンセスの人形タイプ(タバコを吸う大人の男へのオマケになぜこういったものがあるかはご想像にお任せする)や、ボルヘス卿のカダス幻獣辞典を「完全再現!」とうたった欧州では見かけない珍しい生き物(やっぱり可愛いものが喜ばれる。飛ぶカモノハシとか)のモデルが大人気。

特に男の子に人気なのは、欧州には秘匿兵器として噂だけが先行している「飛行要塞」の想像モデル。大抵は空想が先行したおもしろ模型だが、なんと1万個に1つの割合で入っているレアおまけの飛行要塞モデルは、正真正銘の北央帝国空軍機動兵器「トゥルナルシ級要塞Mk-II」の完全再現縮小版であったりする。とんでもない凄腕スパイが煙草メーカーにわざと流したのか、《結社》によるエイダへの嫌がらせか、「伊達と酔狂で生きている」と一部に(カダスの2大国や中部《竜王海域》では特に)名高い第6位の《十碩学》のいたずらであるかは不明。多分3つめだと思われる。

一番のレアモノはやはり「インガノック・テクノロジー」の権化とも言うべき完全環境型複層都市(アーコロジー)モデルだろう。おまけの中に低確率で入っている「銀のシリング」を5枚か「金のシリング」1枚をを集めるともらえる巨大ジオラマ・モデルで、噂では5万2000個のパーツに分かれているとかなんとか。

ちなみにメアリが怒っているのは、新聞記者であり幼なじみであるザックに対して。孤児たちにオマケをあげて小間使いに走らせ、孤児たちはオマケほしさに小間使いに走り、というサイクルに怒っている。模様。