■第3回

吉原の遊び方

珠琴「今日は初めて吉原に来た旦那様のために、吉原での遊び方を紹介するよ!」
天音「珠ちゃん、ずいぶん張り切ってるわね」
珠琴「前は天音姐さんに教えてもらってばっかりだったもん。今日は珠琴がみんなに教えてあげるんだから」
天音「ええ、がんばりましょうね」

 吉原は江戸初期に成立した遊郭で、江戸の町とともに発展してきたことはお伝えしました。江戸時代だけでも、およそ二百五十年間、続いてきたこの吉原は、その長い歴史の中で様々な文化を生み出してきました。その中でも独特であり、有名なのが、遊女と客との関係性でしょう。
  吉原の遊女屋では、切り見世と呼ばれる最下級の店などを除いて、遊女と客が床をひとつにするまでに、様々な段階を踏むことになります。

珠琴「そうそう。なんかめんどくさいんだよね」
天音「初めて来るお客様の中には、こういう仕来りが理解できない人も多いみたいなの」

 吉原を初めて訪れた客は、主に二通りの方法で、相手の遊女を見つけます。仲の町通りと呼ばれる中央の通りに立ち並ぶ引き手茶屋で遊女の紹介を受けるか、遊女屋を実際に回って張り見世を行っている遊女を格子越しに眺めて気に入った相手を見つけるか、です。
  こうして相手を見つけた客は、遊女屋に登楼することになります。しかし、すぐにお目当ての遊女と同衾できるわけではありません。

珠琴「ねぇ、すぐに床入りできた方が、お客様も喜ぶと思わない?」
天音「そこをぐっと我慢して見せるのが、粋な客の心持ちと思われていたのよ」
珠琴「あたし達の指名料だって安くないのにね」
天音「どれだけ、ぱぁっとお金を使えるか、そういう見栄が大事と思われていたみたいなの」

 遊女と同衾(床入り)するためには、いくつかの段階を踏むことになります。
  まず、最初の登楼時を「初会」と言います。この時は宴席のみ。しかも、遊女は同席するものの、客とはほとんど目を合わせず、そっぽを向いたまま。会話もしません。客の相手をするのは幇間(たいこ持ち)か、その遊女のお付きの禿(見習い)達です。
  しかし、ここで腹を立てては、野暮と呼ばれて馬鹿にされるだけです。二回目の登楼では、「裏を返す」といい、またも宴席のみで、まだ床入りはお預けです。遊女は多少は話もしてくれますが、まだまだ客の我慢は続きます。

珠琴「あたし、せっかく来てくれたお客様とお話もできないのってやだな」
天音「わたしも……、なんだか、申し訳なくって」
珠琴「氷笹姐さんは、初会のお客様の様子が面白いって言ってたよね」
天音「そうね。姐さんほどになると、そういう余裕もできるのかしら」

 三度目の登楼で、やっと客は、遊女の「馴染み」として認められます。店からも、その客専用の布団、箸、履き物が用意され、一晩限りの夫婦としての関係を結ぶことができます。遊女の方も客を「主さん」「旦那様」と呼び、自分の相手として認めます。
  遊女から酌をしてもらいながらの宴席を楽しんだ後、いよいと、念願の床入りを果たせるわけです。「初会」「裏を返す」とここまで、指名料である花代の他に、たっぷりのご祝儀をはずんできた客の努力がようやく報われます。
  このように、吉原の遊女と「馴染み」になるには、金銭の他に、多大な我慢が客に必要とされました。長い歴史の中で生まれたこのような仕来りが、吉原遊女の「張り」と江戸っ子の「粋」を育んだのです。
  しかし、江戸時代も後半になると、吉原にも変化がでてきます。「太夫」の位を持つ遊女はいなくなり、こうした「床入り」までの仕来りもなくなっていきます。

珠琴「でも、江戸時代も後半になると、こういう吉原の仕来りにも変化が生まれるんだよね」
天音「そうね。ゆっくりとだけど、吉原も変わっていったのね」
珠琴「ところで、天音姐さん」
天音「なぁに?」
珠琴「吉原の仕来りや伝統って長い間に変わっていったんでしょ? このゲームではそのへん、どうなってるの?」
天音「え、ええとね、ゲームでは、実際には存在しなかった架空の元号「元政」って時代のお話になってるの」
珠琴「ふんふん」
天音「それでね、吉原の面白そうな行事や伝統は全部、同時に存在することになっているのよ」
珠琴「えー、嘘ついてるの!?」
天音「嘘というわけじゃなくて……、架空のお話として、吉原のいいところを詰め合わせているのよ」
珠琴「お得ってこと? それならいいかな?」
天音「ということですので、オイランルージュでは、細かな歴史にこだわらず、吉原の華やかな世界を楽しんでくださいね」
珠琴「それじゃ、また、次回をお楽しみに!」

次回は「江戸流行りすたり」です。



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■コラムバックナンバー
・第1回「吉原事始め」
・第2回「江戸概略」