■第2回

江戸概略

珠琴「はいはーい! 江戸のことなら、珠琴におまかせ!」
氷笹「あら、ずいぶん自信があるみたいね」
珠琴「だってあたし、江戸で生まれて江戸で育った生粋の江戸っ子だよ? 江戸のことだったらなんでも知ってます!」
氷笹「そういう割りには、吉原のことはなにも知らなかったみたいじゃない」
珠琴「だ、だって女の子ですもの! 吉原のことは誰も教えてくれなかったし!」
氷笹「一応、わたしも江戸生まれの江戸育ちなんだけどねぇ」
珠琴「だって氷笹姐さん、吉原から一歩も出たことないでしょ?」
氷笹「はいはい、じゃ、ご高説たまわりますかね」

 言わずと知れた江戸の町は、南関東の中心に位置する大都市です。
  江戸時代に入る以前の江戸は、品川から日比谷、浅草の方まで、遠浅の海が広がっていて、その入り江に村と小さな港が点在していたと言われています。
  この地に最初に、城を築き人を集めて町を作ったのは、1450年代の太田道灌が初めと言われています。太田道灌は江戸城と呼ばれた城を築き、そこを中心に活躍したと言われています。

氷笹「あら、権現様(徳川家康)が来る前は、まるっきり田舎ってわけでもなかったのね」
珠琴「すっごい大きな町でもなかったみたいだけどね。やっぱり、南関東の中心は、鎌倉や小田原の方だったみたいだよ」

 江戸の大きな発展はやはり、徳川家康の関東入府により始まります。天正十八年(1590年)、小田原北条氏の滅亡を受けて、徳川家康は関東に国替えされ、江戸をその中心地に定めます。あわせて250万石と言われた領地の中心地として、家康は江戸の町の開発に乗り出します。それは、神田山と呼ばれる山を一つ削って、その土で日比谷にあった入り江を埋め尽くして市街地を確保するといった大々的なものでした。

氷笹「山を一つ、削ってなくして、海を埋める、ねぇ」
珠琴「すごいよねー。この後も江戸の町はどんどん、海を埋め立てて、広がっていったんだよ」

 徳川家康が征夷大将軍となり、幕府を開くと、江戸はその所在地としてさらに発展を続けることになります。幕府の権威が確立すると、江戸には全国の諸大名が屋敷を置き、藩士を住まわせます。そうして人口が増えれば、そこで生まれる仕事も多くなり、江戸の町はさらに人を引き寄せ、大都市へと発展していきます。この発展の過程で、吉原も遊郭として生まれることとなります。

氷笹「元吉原の方ができたのは、江戸時代の最初の方なのね」
珠琴「そうなんだよね。江戸の町の人口が増えるたびに、町もどんどん広がっていったの」
氷笹「そうね、その広がっていく町に飲み込まれる形で、吉原も新吉原の場所へと移ることになったんですものね」
珠琴「先週のおさらいー」

 吉原が移転するきっかけともなった明暦の大火も、江戸の発展に一役買うこととなります。町で市街の半分を焼失しましたが、その結果、江戸の再開発が進みます。道路が整備され、町並みは町と呼ばれる区画に整理され、江戸市街として編入されていきます。この再開発のための人足がさらに江戸への人の流入を呼び、17世紀初頭には、いわゆる八百八町と呼ばれるほどの巨大な市街と、百万人超える人口を抱え、当時において、世界有数の巨大都市となりました。

氷笹「世界有数か、たいしたもんだね」
珠琴「大きいだけじゃないよ? 江戸の町には水道だってあるしね」
氷笹「ええ、そうね」
珠琴「もともと海だったところもあるし、地下水が少なかったんだって。だから、近くの川から水をとって、それを地面の下に桶を通して、町中に水を流していたの」

 巨大都市となった江戸には、その人口を支えるために、東日本中から食材や布、建材などを中心とした物が集まります。その取引のために物流の中心地としての役割も持つようになった江戸には、たくさんの商人、技術者が集まり、そこから江戸を中心とした町人文化が生まれることになります。もちろん、吉原もその文化の一翼を担ったのは言うまでもありません。

珠琴「ちなみに、当時の江戸は、男の人が女の人よりもずっと多かったんだって」
氷笹「ああ、お武家様は国許に奥さん子供を残しているし、仕事を探して来た人達にも男は多かったからねぇ」
珠琴「だから、吉原みたいな遊郭も大繁盛したんだね」
氷笹「そう。吉原以外にも、品川、深川、本所などに岡場所と呼ばれる遊郭があったんだよ」

 江戸は幕府の中心地としてだけでなく、日本最大の都市として君臨を続けました。それは、やがて、徳川幕府が滅んだ後も、政治、経済の中心地としての役割を失わず、明治時代以降も、日本の首都として発展を続けることになります。

珠琴「というわけでした。わかった? 氷笹姐さん」
氷笹「得意気な顔をされてもねぇ。はいはい、確かにすごいわね」
珠琴「まだまだ面白いことやすごいことがいっぱいあるんだよ!」
氷笹「はいはい、そのへんはまた今度にね」

次回は「吉原の遊び方」です。


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■コラムバックナンバー
・第1回「吉原事始め」