■マスター・テスラのマルセイユ洋上学園都市探訪

私だ。
ニコラ・テスラだ。
学園都市初の転校生にして、思弁的探偵部部長である者だ。、
そして、雷電である男だ。

現在の私はマルセイユ洋上学園都市にて活動している。
私には使命がある。

それは使命であり、誓いであり、我が──


【学生街?】

ん──

私は探偵部邸から学生街を訪れたはずだったのだが。
学生街というものは、こうも極東趣味溢れた場所だったか?

いや、私の記憶とは、些か……。


【オブジェ?】

何だ、このオブジェは?
学生街にこういったオブジェはなかったはずだが。

どれ、少し散策してみるか。
あちらの角にあるのは……。
礼拝用の合同テンプル、とは違う外見だが。

どれ、覗いてみよう。
ん。

何だあれは?


【狸の彫像?】

ツァトゥグァの像か?
オリエント・ツァトゥグァといったところか……。

テンプルの中も見てみよう。


【招き狸?】

招きツァトゥグァとは。
何だ。眷属が多いな。

しかし、特定の宗教、宗派のテンプルや神像は……。
学園都市にはなかったはずだが。
合同テンプル程度で──

まあ、もう少し進んでみるか。
学生街らしき部分から出てみるとしよう。

どれどれ。

ん?

あれは、凱旋門大通りの──機関凱旋門のレプリカだったか。
いや、しかし。
あれは……。


【凱旋門?】

極東文字か。
サンダー・ゲート……だと?


【雷電門?】

ふむ。
サンダー・ゲートか。
凱旋門レプリカではないようだ。

ん。左側に何かあるな。
これは……。


【雷神?】

これは記憶しているぞ。
これは、極東の雷の神だったな。
名は、ライ=ジン、とか──

いや、なかなかに良いものを見た。
どうやら学生たちの中にも趣味の良い者がいるらしい。

ふむ。
実に、良いことだ。

どれ、奥を見てみるか。
ここは区域的にはどのあたりなのか──


【潮騒通り?】

潮騒取りではなさそうだが。
何だ、あの頭の大きな人型のオブジェは。

もう少し進んでみるか……。


【剣?】

これは……カタナ、か?
極東の騎士階級たちが佩(は)く長剣の類。
そんなものが、なぜ、学園都市にある。

ふむ。
何かがおかしいな。

もう少し進んでみるとしよう。
何かがわかるかもしれん。


【統治塔?】

あれは……。
統治塔、にしては趣が、妙な……。
まるで極東のゴジュウノトウのように見えるが……。


【潮騒通りの水路?】

汚染度の低い水路──
潮騒通りのもの、にしては、何か、こう。

典雅に過ぎるというか。
これではまるで極東のワビ・サビではないか。

ん?

何か、小さなテンプルが見えるな。
これは──


【テンプル?】

また極東文字か。
クー……。
クートゥリュー?

カダスの偽神にそんな名前の個体があったか。
しかしまた、なぜ、そんなものがある。

やれやれ。
これではまるで、ボルヘスの本の中に迷い込んだかのような……。

まさか異能学生の精神攻撃か?
いや、しかし……。


【電気騎士?】

これは私の電気騎士!

にしては、いささか小さいな。
色はいいものだが……。
しかし、惜しい。いささか違っている……。


【ディフの塔?】

おや──

あれは、ディフの塔、か?
記憶にあるものとはだいぶ形状も大きさも異なるようだが。

どれ、もっと見えやすい位置から観測するか。
さて、さて。

ここを右へ曲がって……。

よし……。


【ディフの塔】

ん。これは──

記憶の通りではあるが──

だいぶ──

周囲が──

 

      ◆     ◆     ◆

 

「マスター、お昼寝ですか?」

「ん」

「いま、うたたねしてましたよね?」

「ん……」

「してましたよね」

「ネオン」

「はい?」

「学生街やら潮騒通りやらに、極東趣味の場所はあったか」

「あんまり詳しくないですけど……ないんじゃないですか?」

「ふむ」

「なんです?」

「いや」

「難しい顔して、どうかしたんですか」

「いや。それより、夕食の献立は何だ」

「マスター?」

 

 おわり

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