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「セーラさん、セーラさん! あなたが主役のゲーム、遂に企画会議をパスしましたよ!」 |
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「え、ホント! 一体どんなゲームなの」 |
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「ええーっと、大体こんな話なんですけど……」 |
開拓地を走る列車の二等客室。列車強盗によって一箇所に集められた乗客の中に聖職者、クラウス・スタージェスがいた。
強盗 「うぇっへっへ、うぇっへっへ」
下品に笑う列車強盗。彼はクラウスの鼻先に鉄の筒を突きつけておきまりの台詞を口にする。大人しく有り金を差し出すか、さもなくば……
クラウスが観念し掛かったその時。
バン!
ひとりの少女が威勢良く客室の戸を蹴り開け、飛び込んできた。
少女の名はセーラ・ウインタース。行方不明となっている父親を捜し、東部からやってきた。
強盗 「って、お前今まで一体どこに! 客車のヤツは全員集めたはず……」
セーラ「残念ね、お金が無くて貨車で寝てたのよ!」
強盗 「それって、無賃乗車では……」
ズギューン
強盗 「ぎゃー」
強盗を次々と打ち抜くセーラの弾丸。残るは頭目のみ。
だがセーラの目の前で、頭目は姿を変化させる。頭目は人狼(ウェアウルフ)だった!
セーラの放った弾丸をはじき返すウェアウルフ。
事態に愕然とするセーラ。西部にやって来たばかりの彼女は、現在の西部がこのような人外の跋扈する魔境になっていることを知らず、為す術もなく囚われてしまう。
頭目に次々と衣服を剥かれるセーラ。貞操の危機。
だが何故かそのセーラの裸体を悠然と共に鑑賞しているクラウスの存在に気付き、セーラの怒りが爆発する。
セーラ「なに細かく観察してるのよっ! この変態牧師!!」
不自由な姿勢から放ったセーラの蹴りは、クラウスの股間を直撃する。悶絶するクラウス。
呆気にとられ、油断したウェアウルフの手から逃れるセーラ。
しかし依然として対抗手段はない。
焦るセーラに、クラウスが指輪を投げつける。
クラウス「それを付けて撃ちなさい!」
セーラ 「え、わたしが!?」
半ば自棄気味に言いなりに撃つセーラ。
だがセーラの弾丸は、銃弾が効かないはずのウェアウルフの身体を貫通する。
ウェアウルフは自らに起きた事態を理解できないまま、倒れた。
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その晩。
銃撃戦の影響で故障した汽車を降り、ほど近い町の宿を取ったセーラとクラウス。
セーラは事件後、クラウスから聞いた西部の現状を反芻していた。
5年ほど前から、西部にはあのような魔物が現れだした。原因は定かではない。
政府から、魔物狩りに賞金が掛けられている。
今後の身の振り方を考えるセーラの元へ、昼間のウェアウルフがまだ生きており、ゾンビ化した部下を引き連れ、この町へ向かっているとの知らせが届く。
再度の闘いを決意するセーラ。しかし普通の銃弾は、ヤツに通用しない。
セーラはクラウスの部屋を訪れる。昼間の指輪を借りるためだ。
だが、彼女を待ちかまえていたクラウスは「指輪だけでは意味がない」と告げる。
指輪は魔物を倒す魔力を蓄える水瓶に過ぎず、昼間の戦闘で魔力を使い果たしてしまったというのだ。
そして、魔力を補充するためにセーラの力が必要であると、クラウスは真顔で詰め寄る。
自分が西部を彷徨っていたのはセーラに出会うためだった、セーラこそが自分の運命の人であると。
思わずどぎまぎするセーラ。
だが彼女の目の前で、クラウスはバッタのように地面にはいつくばった。
クラウス「僕をもう一度、昼間みたいに罵ってください! 蹴ったり嬲ったりしてください!」
呆然とするセーラに、クラウスは畳みかけるように説明する。
異端派キリスト教の修行僧だったクラウスは、辛く厳しい試練を乗り越え、魔物に抗する「奇跡」を身につけた。
その力は、性的興奮を得ている状態でのみ行使出来るという。
だが、クラウスは10年前の、とある事件がきっかけで男性機能不全、いわゆる「ED」となり、神の声が聴けなくなってしまった。
以後彼は、回復手段を求め西部を彷徨っていたが、為す術なく失望の日々を過ごしてきた。
だが、今日、セーラに股間を蹴られた瞬間、神が股間に降りてきたのだ!
クラウス「あの瞬間、僕は気が付いたのです、自分の性癖に!」
セーラ 「そそそそんな、殴られて興奮するなんて、あんたヘンタイよ!」
クラウス「はい、僕はヘンタイです!」
セーラ 「(そ、即答した!?)」
クラウス「さぁ、あのウェアウルフを倒すために、そして僕が奇跡を行使するために、イヤらしい行為をしながら罵ってください! さぁ! さぁ! さあああっ!」
セーラ 「ああもう、神様、このヘンタイをどうにかしてください!」
激しく拒絶するセーラ。だが、ウェアウルフは刻々と迫っており、セーラに選択肢はなかった。
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魔力を得た指輪を使い、ウェアウルフを倒したセーラ。
彼女に、クラウスはにこやかに笑いかけると、手を伸ばしながら告げた。
クラウス「これからもよろしく、セーラさん」
セーラ 「え?」
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こうして、セーラは、心ならずともクラウスと共に、西部を旅することになった。
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「と言う企画なんですけど、どうですかねぇ」 |
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「し、死んじゃえヘンタイ!」 |
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「ぎゃー」 |