「ナチュさん、どうしたの。ちょっと顔色が悪いですよ?」

「うう、昨日からちょっと、お腹の調子が悪くて……」

「大変。お医者さまを探さないと……。ギー先生はどちらだったかしら?」

「これくらいならへっちゃらですよ。ちゃんとお薬も持っていますから」

「なら良いのですけど。でも、この世界にも薬というのはあったのね……ねえ、待って、ナチュさん。あなた、今飲み込んだ茶色い塊は、何?」

「え? 土ですけど?」

「土を!? え、な、何故です!?」

「昔から、お腹痛い時はこれを飲めって……」

「ナチュさん、ねぇ、ナチュさん。貴女、それは騙されているのではなくて――?」
「そう不思議なことではないわよ。例えば阿弗利加の方には、そういう風習があると聞くもの」
「御冗談を――冗談ですよね?」
「はっ、そう言えばそのような記述を読んだ憶えが……。確か、阿弗利加旅行に行った方の手記によれば、露店でも売っていると」
「売っている!? どうしてそのようなものの売買が成り立つのですか? そもそも、それはいわゆる代替療法とかいう胡散臭いものではないの?」

「だ、だいたいりょうほう……? え、えっと、分かりませんけど、これでお腹痛いの治りますし……」

「一説には、不足したミネラルを補う……とか、なんとか。まぁ、医学的に実証はされているとは聞かないし、代替療法と同じと言えば同じかもしれないけれど」
「なるほど……。確かに効果はあるかもしれませんが、ナチュさん。出来ることなら、ちゃんとしたお薬の服用をお勧めします」

「でも、お薬と言われても……」

「え、ぽんぽん痛いの? じゃあ、はい。正露丸あげる。これを飲めば一発よ」

「ああ、それならばきっと効くと思います」

「ふわぁ、そんなにすごいお薬なんですか? じゃあ、いただきます――ひぃっ!? 何この臭い!?」

「耐えて下さい、ナチュ。これに耐えれば腹痛などすぐに治りますから」

「いやぁ! この臭いは、鼻曲がるぅっ! こんなの絶対お薬じゃないですよぉ!」

「薬よ薬! 令嬢だってそう言ってるじゃないのこれに耐えないとお腹痛いのは治らないわ水っ腹になるわカポジ肉腫はできるわで大変なことになるの! だから今は飲みなって言ってんのよぉ!」

「え、なに? ナチュを合法的に苛めていい感じ?」
「そうと聞いたら参加しなくちゃなんめぇな!」

「ひぃっ、どうしてわたしを持ち上げて自由を奪った上に、太腿を無理矢理開こうと!?」

「薬は直腸から吸収しろってぇ言うだろうよ」

「熱さましも胃薬も点鼻薬も、尻の穴から入れるのが常識常識!」

(なっ! 茶色いクロみたいなのが野外でおっぴろげだなんて、なんとも破廉恥な! い、いやしかし、これはなんとあああぁあの危なっかしィ下穿きがぁ!)

「やっ、あっ、やめっ、今わたしお腹下り気味で……!? そんっ、な、お腹……押さな……ひぃっ……でぅっ!?」

「だーいじょうぶだって。そん時ゃあたしら、かからない位置に逃げてるから」

「――っ、ひいぃぃぃっ!?」

「ナッ、ナチュ!? ――あ、あばば、あば、あば……(失神)」

  ――――――

「――って、お話を聞いたから、歌にしてみようと思うんだけど、どうかな清修さん?」

「やめろ」
  ――――――
「しかし、どうにも不安だね。そのような薬しか存在しないとは」
「そんな療法であっても、誰も疑問に思うことはない程度の病しかない。きっとそういうことだろう。常識では考え難いが、例がないわけでもない」
「と、言うと?」
「例えばコロンブス。彼が新大陸、アメリカ大陸を発見し多くの人々が移民した。その結果、アメリカ大陸には存在しなかった病気が、免疫を持たぬ先住民の人々へと蔓延し、甚大な被害をもたらした。――征服者としては喜ばしい話だったかもしれないがね」
「うん、そう言った話は聞いたことがある。……では、もしかして、私たちが来たことにより、ここに見知らぬ病気が広まるという可能性も?」
「……感染するような病気の罹患者がいれば、或いはあるかもしれない」
  ――――――
「そのような病にかからない為にも、美味しいものを食べることに妥協をしてはいけないと思うの。ここには折角、新鮮な果物や野菜が揃っているのだから」
「でも、こうしてもぎたてを食べるのもとても美味しいけれど、ここまで美味しいとサラダにして食べたくなりますね」

「さらだ……? こうやって食べるんじゃだめなんですか?(もぎっ、シャクッ!)」

「ダメというわけではないわ。ただ、野菜をお皿やボウルに盛り付けて、ドレッシングという、甘辛いのや、甘酸っぱい味のついたソースをかけるの。そうすると、普通に食べるよりも美味しく野菜がいただけるの」

「あまから〜☆ あまにが〜☆ ……あ、そういうのなら、わたしも時々やりますよ」

「あら、ドレッシングがあるの?」

「ええ。えーと……あ、いた」

「いたって……ねぇ、ナチュさん。それは蟻……よね?」

「はい! これは酸っぱい味がして、潰したのを野菜にまぶして食べると、一風変わった味がして美味しいんですよ! 試してみますか?」

「あら、面白そう。幾らか美食奇食で昆虫食を試したことはあるけれど、調味料にした経験はないわ」
「……一風変わった味になるのは分かりますけれど、いや、ですがそれは」
「あら? 何を嫌がることがありますの。貴女たちも郷土ではイナゴやお蚕、ザザムシに蜂の子などを食べているのでしょう?」

「あ、ザザムシ美味しいですよね。わたしも時々、川ですくって食べますよ!」

「ここにいるザザムシは確かに良いものが多そう。私たちの故郷ではもう、本物のザザムシは少なくなってしまっていて。缶詰を買っても中にいるのは……」
「ほら、それと同じ。頂いてきた純朴な味わいの果実酒に、蟻酸のサラダは合いそうよ」
「そう言われるとそうかもしれませんけれど、でも、やっぱり私は……っ(脱兎)」」
「……あら、残念。お食事は人数が多い方が楽しいと言うのに。……あ、そこの下級水夫に小間使い。こちらにおいでなさい」
「なんですかー?」
「なになにー?」
  ――――――

「そんで下級水夫の一人が食べさせられたさらだの中に兵隊蟻がいてね――」

「……(苦虫を噛み潰した顔)」
  ――――――
「……うう、船首につるされっぱなしで忘れられてる間に、壊血病にかかったみたぃ……。このままじゃ、歯がボロボロ抜け落ちて総入れ歯に……なっちゃ…………ぅ………………」
  ――――――
 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(異邦の人々とナチュは仲良くやっています。そう見えます、見えますけれど……)
(ナチュ、あなたは本当に幸せなのですか……?)


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